TOP ご利用事例 AIの進化と共に深化してきた事業モデル──株式会社SrushがFlex Capitalのベンチャーデットで得た「経営の機動力」

AIの進化と共に深化してきた事業モデル──株式会社SrushがFlex Capitalのベンチャーデットで得た「経営の機動力」

株式会社Srush 様
株式会社Srushは、対話型分析AIエージェントSrush AIを中核とする「データ統一クラウド」と、データ基盤構築からレポート作成、AIエージェント構築までを一括で担うデータプロセスアウトソーシング(DPO)の二本柱で事業を展開しているデータ活用支援企業です。
創業7期目を迎え、今や「データ統一クラウド」の導入企業が300社を超える同社ですが、これまでに顧客ニーズや技術環境の変化に合わせ、複数回の事業転換(ピボット)と事業拡大を行ってきました。AIの進化を取り込んで「データ統一クラウド」を発展させ、そして人材教育・人材紹介にまで支援の幅を広げる中で、「株式の希薄化を抑えながら、成長の実現に向けた資金を確保する」という課題に直面していました。
そこで同社が選択したのが、株主である株式会社ディープコアからの紹介をきっかけに検討したFlex Capitalのベンチャーデットです。
本記事では、代表取締役CEOの樋口海さんに、事業モデルを深化させてきた経緯、エクイティとデットを組み合わせる資金調達の考え方、そしてFlex Capital導入の決め手について詳しく伺いました。

目次

属人化するExcelからの脱却──データ活用の民主化を目指した創業

ーー まず貴社の事業内容と創業の経緯について教えてください。

もともとNTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ株式会社)の法人営業部門で、お客さま専用のデータ基盤を構築する仕事をしていました。クラウドがまだ普及していない時代に、サーバーを調達してデータセンターでホスティングし、そこからデータを抽出してダッシュボードを作るといった、いわばデータ分析の原型のような支援業務をしていたんです。
その後、事業会社の中で自分自身がデータ分析やBIツールに触れる機会が増えていく中で、データ活用という領域には、まだ大きな課題があると感じていました。ツールが進化しても、結局は手元のExcelには勝てない。そして、そのExcelは属人化の極みで、複雑な関数が並び、担当者しか理解することのできない「秘伝のタレ」のようなファイルになってしまう。そのような属人化を回避し、データ活用の民主化を進めたいという思いから、Srushを創業しました。
現在は、データを投入すると自動でレポートや分析を実行するAIエージェントSrush AIを中核とした「データ統一クラウド」と、紙・CSV・Excel・データベースなど形式を問わずデータをお預かりし、基盤構築からレポート作成、AIエージェント構築までを一括で担うデータプロセスアウトソーシング(DPO)の二本柱で事業を展開しています。
データ活用の支援というと、コンサルティング会社、ツールベンダー、データ入力の代行会社など、それぞれの専門会社に業務が分断されがちです。私たちは、紙の資料をお預かりするところから、AIエージェントを構築するところまでを一社で一気通貫で担っている点が、大きな特徴だと考えています。

ーー どのような企業に、どのように活用いただいているのでしょうか。

中堅・中小企業が中心で、なかでも売上規模100億円から500億円ほどの企業に多くご利用いただいており、ポテンシャルとしては約10万社をターゲットに置いています。ガートナージャパンの2025年の調査によれば、データ活用で全社的に十分な成果を得ている日本企業は8%ほどで、しかもその多くは資金のある大企業です。残る90%以上の企業にこそ可能性があると考えていて、大手ベンダーが積極的に提案に来ないような企業にこそ、私たちが価値を届けられると思っています。福岡県の株式会社新出光さま、熊本県の株式会社再春館製薬所さま、広島県の株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリーさま、兵庫県の株式会社JR西日本テクシアさまなど、地方を代表する企業にもご利用いただいています。
たとえば製造業のお客さまでは、工場や生産ラインごとに機械が異なり、出力されるデータの形式もそろっていないことが多く、集計の前処理だけでも多くの手間がかかります。担当の方が月に数時間から十数時間をレポート作成に費やしても、経営層からはより深い分析を求められる。そうした現場の課題を解消する手段として、「データ統一クラウド」を活用していただいています。
データの分析にあたっては、AIそのものに計算をさせるのではなく、クラウド上のデータ処理基盤に対して計算式を指示する方式を採っています。AIに直接計算させると事実と異なる出力(ハルシネーション)が生じやすくなるためで、この仕組みによって大量のデータでも前処理なしで精度の高い集計結果をお返しできています。
おかげさまで経済産業省の「レガシーシステムモダン化委員会」にも招聘いただきました。また、株式会社西日本フィナンシャルホールディングスが主催する「第6回西日本FHビジネスコンテスト」では、宇宙開発やロケット、ゲノム解析といった最先端領域の企業と並ぶ中、グロース部門で最優秀賞をいただきました。宇宙開発の恩恵は実感しづらい一方、Excelでの手作業がなくなることは明日からでも役に立つと感じてもらえる。この身近さが評価いただけた理由だと捉えています。

  • 樋口海|株式会社Srush 代表取締役CEO
  • NTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ株式会社)の法人営業部にて大手自動車メーカーを担当、グローバルインフラの導入に従事し、全社表彰や最高評価を受賞。退職後、シンガポールにて日系製造業の営業戦略を担当。帰国後、製造業向けSaaSを提供する会社の立ち上げを経て、代表取締役として株式会社Srushを共同創業。 早稲田大学卒、一橋大学大学院商学研究科修了(MBA)

AIの進化と共に──「データドリブンジャパン」という一貫したビジョン

ーー 創業から現在まで、事業内容を大きく転換されてきたと伺っています。当時の経緯を教えてください。

直近でいちばん大きかったのは、AIの進化に伴うピボットです。もともとはSaaS型の「データ統一クラウド」として、データを一箇所に集め、ダッシュボードを作るというプロダクトを提供していました。ただ、AIの進化によってダッシュボード作成や分析のコストが大きく下がったことで、このプロダクトがどこまでお客さまに刺さるのか、疑問を持つようになったのです。そこで、お客さまが持っているデータを投入すれば、自動でグラフや分析結果が出てくるSrush AIを開発し、「データ統一クラウド」を進化させました。

ここまでで導入企業数は大きく伸びたのですが、次の課題に直面しました。AIにデータを処理させるには、データそのものを整えておくことが不可欠なんです。データ分析の世界には「ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない」という言葉がありますが、AI時代においても、定義がそろっていないデータからは、精度の高いレポートは生まれません。

そこで、プロダクトの提供だけでは価値を届けきれないと判断し、人材教育や受託によるデータプロセスアウトソーシング(DPO)といった事業へと領域を広げました。地方のお客さまには、AIの進化そのものよりも、目の前の課題を埋めてくれる存在が重要だと考えたからです。

こうした転換は今回が初めてではありません。創業初期には、営業向けのデータ分析サービスから、SalesforceのデータとGoogleアナリティクスのデータを組み合わせてダッシュボード化する受託型のBIサービスへと転換した経験もあります。事業の形は変わっても、お客さまのデータ活用を前に進めるという軸は一貫しています。

ーー 事業モデルを進化させるにあたって、株主など社内外のステークホルダーとの調整は大変ではなかったですか。

実はそれほど大変ではありませんでした。フェーズごとに株主とはコミュニケーションを取っていますが、事業として妥当な範囲の戦略を取ってきたという自覚があります。たとえば、人材紹介業への展開も、地方で育成した人材を地方の企業へ紹介し、その方がSrushのサービスを使う、という一連のストーリーが描けていたので、納得感を持っていただけました。2030年までにすべての企業がデータを使いこなす日本へ。この「データドリブンジャパン」という旗があることで、ストーリーメイクがしやすくなり、説明のコストも下がっていると感じています。

データドリブンジャパンHP


データドリブンジャパンnote

エクイティとデットを併用してきた資金調達の軌跡

ーー これまでの資金調達の経緯について教えてください。

創業からこれまで、複数回のエクイティ調達を行ってきました。当初は営業向けのデータ分析サービスとして資金調達を実施しましたが、その後の事業転換を経て、セールスダッシュボードの受託ビジネスが伸びたタイミングで次のラウンドを実施し、さらにそのプロダクトの成長を背景に直近のラウンドへとつながっています。

各ラウンドでは、エクイティだけでなくデット—融資や資本性ローンなど—も併用してきました。私自身、Srushが2社目の起業で、以前からデットとエクイティの使い分けについて一定の経験則を持っていたことが大きいと思います。基本的な考え方としては、将来のキャッシュフローや返済負担を踏まえ、財務の健全性を損なわない範囲であれば、デットは積極的に活用するというものです。そのうえで、エクイティ調達のタイミングにもデットを組み合わせておきます。

振り返ると、市況の変化を十分に見極めきれなかった部分もあり、調達のタイミングにはもう少し工夫の余地があったと感じています。この経験があるからこそ、資金調達の選択肢を複数持っておくことの重要性を強く実感しています。

Flex Capitalとの出会いと、ベンチャーデット導入の決め手

ーー Flex Capitalを知ったきっかけを教えてください。

株主であるディープコア社からのご紹介がきっかけです。デットやエクイティといった選択肢についてはある程度知識があったのですが、Flex Capitalのサービスについては、実際に検討するまで詳しくは知らない状態でした。

ーー 検討の中で、他の選択肢と比較された部分はありますか。

はい。他の資金調達手段も並行して検討していました。その中で重視したのは、資本コストの観点です。返済可能性を十分に見極める必要はありますが、株式の希薄化を伴うエクイティ調達と比べ、デットは相対的に低い調達コストで機動的に資金を確保できる選択肢だと考えています。

特に、IPOまでの時間軸を見通しにくい環境では、必要以上に高いバリュエーションで大型のエクイティ調達を行うと、次回調達やM&A、IPO時に求められる企業価値のハードルが上がるリスクがあります。将来の選択肢を広く保つためにも、エクイティだけに依存しない資金調達が重要だと考えています。

ーー 最終的にFlex Capitalのベンチャーデット導入を決めた理由は何でしたか。

金利や返済負担は発生しますが、事業計画と将来のキャッシュフローを踏まえればコントロール可能であり、株式の希薄化を避けられる点を含めて合理的だと判断できたことと、このタイミングで手元流動性を高めておきたかったことが大きな決め手です。

新幹線の中で完了した手続き──スピードへの評価

ーー 実際の利用プロセスについての感想を教えてください。

これまで金融機関とは5〜6社ほどとお付き合いがありますが、それらと比較して手続きは非常にスムーズでした。紙の書類に押印し、住民票を持っていく、といった従来型の手続きに慣れていたので、オンラインでの本人確認(eKYC)を含め、とても負担が少なかったことに驚きました。実際、担当の方から契約手続きの案内が届いたとき、私は新幹線に乗っている最中だったのですが、移動中にすべて完了してしまいました。

一方で、調達できる金額についてはもう少し余裕があるとうれしいと感じた部分もあります。将来の売上をどのように評価して条件を算出しているのか、その仕組みについてもより理解を深めたいと思っています。

ーー 導入後、現時点でどのような効果を感じていますか。

具体的な数値成果を語るにはまだ早い段階ですが、手元流動性が厚くなり、事業投資や次の資金調達について、時間的な余裕を持って判断できるようになった点は大きな効果だと感じています。

エクイティだけに依存しない経営へ──粗利改善と人材事業が支える次の一手

ーー 今後の事業展望について教えてください。

これまではエクイティ調達に頼ったキャッシュフローモデルになっていた部分があるので、そこから脱却し、自分たちの力で持続的に成長できる経営体制に転換していくことが、当面の大きな目標です。具体的には、既存のお客さま一社あたりの提供価値を高めながら粗利を改善していくこと、株式会社大塚商会さまやNTTグループさまといった販売パートナーとの連携をさらに強化していくことに力を入れています。

また、地方で人材を育成し、地元の企業へつなげていく「データドリブンジャパン」の実現に向けて重要な役割を果たすと考えています。

ーー 最後に、資金調達を検討している経営者やCFOの方々へメッセージをお願いします。

エクイティに依存しすぎた資金調達は、経営の選択肢を狭めてしまうことがあると、自分自身の経験から感じています。株式の希薄化を避けながら資金を確保できるデットという選択肢は、事業のフェーズによっては非常に有効な手段になり得ます。

金利という対価を払いながらも、自分たちの経営の自由度を保つという発想は、これからのスタートアップ経営において、より重要になっていくのではないかと思っています。

ーー本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

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