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スタートアップファイナンスに「厚み」を──ファンズCFO前川寛洋氏が語る、Flex Capital活用と描く業界の未来

ファンズ株式会社 様
資産運用したい投資家と資金調達したい上場企業などをつなぐ直接金融プラットフォーム「Funds」を運営するファンズ株式会社。同社は、同事業を中核に、2023年9月に不動産事業を開始、同年12月にはベンチャーデットを手がける「Funds Startups」を設立、2026年6月には台湾で販売金融・BNPL事業を手がけるAMFC社の買収など、事業の多角化を進めてきました。
かかる事業展開の拡大に合わせ、同社は直近でシリーズEの資金調達を完了しました。多角化する事業の中、それぞれの事業特性や資金使途に応じて最適なファイナンス手段を機動的に組み合わせる必要があり、資金計画は複雑性を増します。そんな中、今回の資金調達では、エクイティ・デットの組み合わせの一つにFlex Capitalのベンチャーデットを組み入れる決断をしました。
本記事では、当社取締役CFOであり、Funds Startups代表取締役の前川寛洋さんに、資本政策に対する考え方やFlex Capital活用の背景、そして同じくベンチャーデットを手がけるプレイヤーの一面から、共にベンチャーデット業界を盛り上げていきたいという展望について、じっくりと伺いました。

目次

個人投資家と企業、双方の「機会」をつなぐ──ファンズの事業とCFOとしての役割

ーーまず、ファンズという会社は、具体的にどのような事業を展開しているのでしょうか。

私たちにはグランドデザインとして描いているものがあり、その中の基盤事業にあたるのが、ファンズという単体の事業です。
個人投資家の側には「安心して資産運用できる機会が少ない」という課題があります。一方で、法人側には、たとえ上場企業であっても、企業価値が一定規模以下の場合には、取りうるファイナンスの手段が少ないという課題があります。この2つの課題をつなぐプラットフォームが、ファンズの事業の骨格です。
事業としては、いわゆるオンラインレンディングのプラットフォーム、あるいは貸付型クラウドファンディングと呼ばれることもあります。呼び名はいくつかありますが、要は、資産運用をしたい個人投資家と、資金調達をしたい企業とをマッチングする直接金融のプラットフォームビジネスということになります。

ーーCFOとして、どのような役割を担うことをテーマとしていますか。

国内から海外、金融から不動産と、様々な事業領域に多角化を進める中で、これらの事業を健全に支えるための財務基盤を構築していくことが、ファンズというグループ全体の企業価値の最大化に、自分として最も貢献できるテーマだと考えています。
個人投資家と企業をつなぐファンズ本体の事業、Funds Startupsが手掛けるベンチャーデットファンドの運営、そして台湾AMFC社の買収や不動産事業といった複数の事業が同時並行で進む中で、それぞれの事業特性に応じた資本政策の設計を担うことこそ、CFOとしての自分の役割だと捉えています。

  • 前川寛洋|ファンズ株式会社 取締役CFO/Funds Startups株式会社 代表取締役
  • HRスタートアップで経営企画、国内事業推進の執行役員を務めた後、2020年にファンズに参画。取締役CFOを務める。国内外のVC、機関投資家、事業会社、金融機関等から総額80億円以上の資金調達を主導する他、資本政策、M&A、IPO準備等を幅広く管掌。その他、自民党スタートアップ議連、新経連、全銀協等のスタートアップ関連の委員等や、日本最大のスタートアップカンファレンス”IVS”の企画責任者を歴任する等、官民の幅広い領域でスタートアップ市場に貢献。

キャリアの出発点──企業価値の最大化を追求してファイナンスの道へ

ーー前川さんご自身のキャリアの出発点や、CFOという仕事を選ばれた理由についてお聞かせください。

原点にあるのは、社会の構造的な「負」を解決することで、社会的価値の最大化を目指していきたいという思いです。その時々で、重厚長大な社会課題と呼べるようなものがどこにあるのか、そのボトルネックを見つけて解決していきたい。そういう発想を、大学を途中で辞めて前職のスタートアップにジョインした頃から一貫して持っていました。

前職では、労働市場の「負」を解決したいと考えていました。日本固有の新卒一括採用や、配属・上司が選べないいわゆる「ガチャ」的な仕組み、転職市場の流動性の低さ。これらが、日本の経済成長や、社会人になった後の一人ひとりの幸福度に、想像以上にダメージを与えていると感じていました。

一見すれば、こうした社会課題に取り組むには大手人材企業に入る方が、正攻法と思えるかもしれません。ただ、既存市場そのものが、既存ルールを肯定している社会構造の中で、ゲームルールそのものを変えようとすると、どうしてもイノベーションのジレンマが起きてしまいます。逆に、最も矛盾なく変化を起こしていけるアプローチを志向できるのがスタートアップという手段でした。課題のテーマと、それに取り組むためのアプローチとして、スタートアップという手段を選んだというのが実態です。

ーーそこから現職では、CFOというファイナンスを中心とする役割に転じます。

正直、肩書きや役割そのものへのこだわりはありません。今はCFOという立場ですが、前職では経営企画などを担う執行役員でした。その会社の企業価値を最大化でき、自分自身が成すべき課題解決をしやすく、執行しやすいポジションで働きたいというのが一貫した考え方で、自分の役割自体も企業の成長とともに流動的に変わっていくものだと捉えています。自分がCFOを任命された際にも、私からファンズ代表の藤田さんには「肩書きは何でも構わない」と伝えていました。

ですので、私の場合、ファイナンスそのものへの関心というより、企業価値の最大化にどれだけ貢献できるかという観点で、スタートアップファイナンスというテーマに強く惹かれてきました。当社の事業特性においては、ファイナンスが制約上限として成長が既定される構造にあります。だからこそ、「ファイナンス」をグロースドライバーとして捉え、それを着実に遂行する資本政策、財務基盤を構築するための仕事に注力しています。

資本コストを軸にした規律ある資金調達という哲学

ーー前川さんが発信されている「資本コストを意識した規律ある調達」という考え方について、詳しくお聞かせください。

考え方はシンプルで、その時々で自分たちのリスクリターンに見合ったファイナンスを選ぶべきだ、ということに尽きます。

ここでいう「コスト」は金利をはじめとした費用だけを指すわけではありません。資本コストの裏側には、必ず何らかの規律──どのような報告義務や資金制約、コベナンツを求められるのか──が隠れています。私は常に、その規律の重さと、今の自分たちの会社が抱える不確実性、実現したいこと、そして、資金使途にどれだけの自由度を求めるのか、という観点を突き合わせながら、適切なコスト水準を設計するようにしています。ここの設計を誤ると、調達する側・提供する側のどちらかが不本意な結果になってしまいます。

そのため、私にとって資本コストという概念は、単なる金利水準の比較ではなく、お互いの期待値をすり合わせ、双方のリスクに対する許容度の非対称性を下げていくコミュニケーションのためのツールでもあると考えています。そういう観点で資本コストを捉え、実際の調達判断に活かしているというのが、今の私の考え方です。

ーー台湾AMFC社の買収や不動産事業など、複数の事業を並行して進められている中で、CFOとしてこの資本政策の設計思想をどのように運営に落とし込まれているのでしょうか。

具体的にどの投資対象にどう資金を投じるかを考える際には、その投資対象の性質と自分たちが許容できるファイナンスの規律を、資本コストという同じ物差しで突き合わせるようにしています。概念的な話にはなるのですが、その物差しの中で最適化を図っています。

デットがいいのか、エクイティがいいのか。もっと言えば、親会社でファイナンスするのがいいのか、それとも子会社側で調達するのがいいのか。デットの中でも、Flex Capitalのようなベンチャーデットのプレイヤーが適しているのか、それとも伝統的な銀行融資が適しているのか。あるいはアセットファイナンスがいいのか、無担保のファイナンスがいいのか、こうした選択肢のドライバーは非常に多くあります。それを一つひとつ、先ほどの概念の中で整理していき、「今これをやりたいから、これくらいの規模・条件でファイナンスをしていこう」という判断を積み重ねていきます。それを全体で積み上げたときに、次のラウンドで、デットとエクイティを何対何で、どのようなミックスにするのが自分たちにとって最善なのか、という全体設計が構築されていきます。そういう流れで資本政策を組み立てています。

Flex Capital導入の経緯と評価

ーー同じベンチャーデットのプレイヤーとして、Flex Capitalを知ったきっかけや、最終的に活用を決めた背景について教えてください。

ベンチャーデットのプレイヤーとして、もともと近い立ち位置にいたこともあり、Flex Capitalの存在は自然と早い段階から認識していましたし、スピードが求められる資金調達が必要になった場面では、真っ先に相談先として思い浮かぶ存在の一つでした。これは私たち自身のファイナンスに限った話ではありません。私たちがベンチャーデットファンドを通じて投資させていただいているスタートアップが、スピードを求める局面に直面した場合にも、まず第一想起としてFlex Capitalへの相談を考える、というくらいの位置づけでした。

ーー実際に活用される中で感じた課題や、Flex Capitalの対応についてはいかがでしたか。

私たちは海外法人を含むグループ会社を有しており、いわゆる通常のトランザクションデータの連携がしづらい構造になっています。そうした会社の場合、Flex Capitalの標準的な審査フローは、正直なところフィットしにくい部分があるのではないか、と最初は感じていました。

ただ、実際にはその点についても非常に手厚くサポートいただきました。重要な部分はデータ連携によって対応しつつ、そこから漏れてしまう全体像の部分は、むしろ定性的なアプローチで丁寧に埋めていただく。そうした進め方をとっていただけたので、結果として私たちとしては特に不満はなく、非常にスピーディーに調達を決められ、ありがたい対応だったと感じています。

「速さ」を武器にする資本戦略──スタートアップファイナンスの未来観

ーー今回のFlex Capital活用を通じて、どのようなフェーズ・状況のスタートアップに特に有効だと感じられましたか。

個人的には、スタートアップの資本戦略というのは、突き詰めると「高さ」と「速さ」をどれだけ両立できるか、その総和だと思っています。

「高さ」というのは、事業としてどれだけ高い成長率を実現できるか、その結果として企業価値をどれだけ最大化できるか、という観点です。ただ、経済性というのは必ずしも「絶対的に高いこと=ROIの高さ」だけが重要なわけではありません。仮に10倍に成長したとしても、それが30年もかかっていては期待外れとなります。つまり、何年もかけて高さを追求するよりも、むしろ素早く一定の成長を取り込むこと自体も、非常に重要なファクターになります。場合によっては、高い成長が実現しなかったとしても、極めて早いスピード感で目標水準を実現できれば、結果として高いIRRになり、それに見合ったリスクリターンの異なるファイナンスを柔軟に組み合わせる、という選択肢が取れるようになります。

「高さ」は市場規模や市場のコンディションなど、いろいろな外的要因に左右されるため、どうしても自社内ではコントロールしにくい。一方で「速さ」は、経営の中で内部的にコントロール可能な変数です。この速さを実現するための経営とは、常にいち早く経営環境を予測し、必要性が顕在化する前段階で準備を完了させ、投資判断する際に必要な資金繰りをあらかじめ確保しておくということでもあります。これが一つ一つ後手に回ればそれだけ経営全体の”待つ時間”が生まれ、それが事業の停滞や新規事業の拡大の機会損失に直結します。これらの摩擦係数を最小化することで、スタートアップが実現したい成長を叶えるまでの時間軸を、もっと早められるはずだと考えています。

ーースタートアップという存在だからこその「速さ」の重要性ですね。

正直なところ、「速さ」という観点にあわせて動いてくれるファイナンスの存在は、スタートアップにとって、非常に重要な、いわばマスターピースのような存在だと感じています。もちろん、何十億円という規模を時間をかけて調達する「高さ」のファイナンスも大事です。ただ、スタートアップにおいては速さの方が重要度が高い局面が多々あります。この速さという観点を突き詰めて取り組んでくれる金融機関は、本来スタートアップにとって当たり前のように使いこなすべき存在であり、逆に、それをどう自社の資本戦略に組み込んでいくかを当たり前に考えられる経営の方が、正しいのではないかと思っています。

たとえば、3カ月後に1億円を、金利5%で調達できる選択肢と、2週間で1億円を、金利10%で調達できる選択肢があったとします。月次レベルでの成長率を考えると、この3カ月分の時間差の方が、5%の金利差よりも大きな意味を持つケースが、伸びているスタートアップであるほど多いはずです。資本コストと、自分たちが到達できるリターンを比較したときに、この考え方は、少なくとも私たちの会社においては十分に肯定できるものでした。そういう意味で、速さを重視した資金調達として、Flex Capitalを活用したということになります。

スタートアップにおいて、速さを武器にするということ、そしてその速さにアラインしてくれるファイナンスの技術は、もっと広く知られてほしいと思っています。それを巧みに使いこなしているスタートアップこそ、資本効率が高いと市場から評価され、その評価が新たな資金調達につながっていきます。私たち自身も、そうした事例の一つになれるよう取り組んでいきたいと思っています。

「真ん中の面積」を埋める──ベンチャーデットの民主化を目指したFunds Startups創業の背景

ーーさて、前川さんはファンズCFOというお立場とともに、子会社Funds Startupsの代表としての役割もあります。Funds Startupsを立ち上げられた経緯や、その狙いについて教えてください。

スタートアップの資本市場が抱える構造的な課題を取り払っていくことが、社会にとって 一番のブレイクスルーになり得ると個人的に感じていました。だからこそ、やるのであればこの課題を正面から解決するプロダクトをつくりたいという趣旨で、Funds Startupsという会社を立ち上げました。

実は当初、私自身が本当にやりたかったのはベンチャーデットではなく、スタートアップ向けのメザニンファイナンス(デットとエクイティの中間に位置し、両者の性質を併せ持つ資金調達手法) でした。ただ、メザニンファイナンスは実務上の難易度が非常に高く、そうした中で台頭してきたのが、デットとエクイティ双方の性質を組み合わせたベンチャーデットでした。この手法を私たち自身がしっかりコントロールできれば、理論上、エクイティと伝統的な融資の間に広がる「真ん中の面積」を、かなり広い範囲で埋められる。そう確信し、まずはベンチャーデットのマーケットをつくっていくことに取り組んできました。

もっとも、私たちだけでできることには限りがあります。そのため、このマーケットにおける本丸ともいえる金融機関を、デットのプロバイダーとして巻き込みながら、真っ当な形でマーケットそのものを育てていくことを重視してきました。そうすることで、先ほど申し上げたスタートアップの資金調達における構造的な課題の解決を実際に実現できる環境をつくっていきたい。そういう思いを持って、この領域にチャレンジしています。

業界の「厚み」をともに──スタートアップファイナンスのエコシステムへの想い

ーー今後、Flex Capitalを含めたベンチャーデット業界のプレイヤーと、どのような形で共存・連携していきたいとお考えですか。

私個人としては、今のスタートアップのファイナンス環境に必要なのは、金融の「厚み」だと考えています。従来はVCによるエクイティか、銀行によるシニアローンかという二者択一的な環境でしたが、プレイヤーは徐々に増えてきています。それでも、エクイティとデットの「真ん中」の面積を埋める選択肢は、まだまだ限定的だと感じています。伝統的なVCのエクイティの中にもさまざまな手法やリスクリターンの考え方が出てくるべきですし、デットの中にもいろいろな考え方が生まれてしかるべきだと思っています。

「選べない環境」から「選べる環境」へ。そして、その選択肢をどう組み合わせて最適化していくかが、これからのスタートアップの腕の見せ所になっていきます。その組み合わせ全体を正当化できるかどうかを、金融という目線で判断していく──そうやってつながっていくのが、これから求められる環境の姿だと思っています。まだまだこの「厚み」は足りていませんし、プレイヤーは増えていても、市場として成熟し、持続可能なものになっているとは言い切れません。だからこそ、この市場自体をどう持続可能なものにしていくか、そして、この市場が社会に本当に必要とされているのだということを証明し続ける積み重ねが、今強く求められていると感じています。

その意味で、Flex Capitalとは、良い意味でライバルとして切磋琢磨しながら、いいディールをお互いにどんどんつくっていきたいと思っています。場合によっては、お互いの強みを持ち寄って、スタートアップを一緒に支援し、その会社の発射角を上げていくということもやっていきたいと考えています。こうしたさまざまなファイナンスの選択肢が当たり前に肯定される環境を、ぜひご一緒につくっていきたいですね。

ーーFunds Startupsでは、初号ファンドとなった「Funds Venture Debt Fund-I」に続き、本年6月にディープテック領域を対象とした「Funds Venture Debt Fund-II」を設立されました。

新たに設立した2号ファンドは、オールステージかつディープテックに焦点を当てたファンドです。ディープテックは、国の重点分野としてもこれから育てていかなければならない産業領域です。非常に重厚長大で、研究開発フェーズのハイリスクな領域を支える資金から、量産フェーズのように資金量そのものが必要になる領域まで、多様な資金使途が存在します。こうした産業にアラインするための金融の「厚み」が、今こそ必要だと考えています。過去の定量データだけで評価するのが難しい領域だからこそ、お互いの強み・弱みを補い合いながら、支援することも可能なのではないかと思っています。

たとえば、同じディープテックのスタートアップであっても、あるフェーズではFlex Capitalのファイナンスが一番フィットし、次のフェーズでは私たちのファイナンスがフィットする、というように、フェーズごとにバトンパスをしていくようなイメージが、これからのデットプレイヤー同士の協業のあり方の一つではないかとおもいます。そうした有機的なつながりを積み重ね、私たちとFlex Capitalとの組み合わせによる最適解のような事例をつくりながら、武器としてのベンチャーデットを手にするスタートアップの数を、共に増やしていけたらと考えています。

ーー本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

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