苦境を乗り越えた事業ピボットからbellSalesAIへ──ベルフェイスが選んだ、成長を止めないためのFlex Capitalベンチャーデット
このような事業のピボットと新たな事業の成長フェーズの最中、同社は2025年11月と2026年2月にシリーズEの資金調達を実施しました。シリーズが進行する中で、株式の希薄化を避けながら、成長投資のための資金を確保するための手段として選んだのが、Flex Capitalが提供するベンチャーデットです。同社はなぜFlex Capitalのベンチャーデットを活用するという判断に至ったのか。
本記事では、執行役員CAOの田村優介さんに、事業ピボットの経緯や資金調達戦略の変遷、そしてFlex Capital導入の決め手について詳しく伺いました。
目次
「事前準備不要」の価値が消えた日──コロナ禍で直面した事業縮小と事業ピボット
ーーベルフェイスの事業と、コロナ禍でどのような影響を受けたか教えてください
当社は、電話の延長線上でWeb会議に近い商談体験を提供する電話面談システム「bellFace」を展開し、2015年の創業から着実に事業を拡大してきました。顧客は事前にアプリのインストールやURLの共有、日程調整といった準備を行わなくても、4桁の接続番号を伝えるだけで即座に画面共有を伴う商談を開始できる点が特徴で、営業現場からは「事前準備不要のWeb商談」として評価されていました。シリーズCの調達時点で累計52億円を調達し、事業成長を加速させていましたが、新型コロナウイルスの流行が私たちを取り巻く事業環境を一変させることになります。世の中のリモート化が進む中で、ZoomやTeamsといったWeb会議ツールが急速に普及し、「事前準備が不要」というベルフェイスの価値が相対的に低下したことで、解約が増加し、業績が急激に悪化しました。
ーー 業績悪化を受けて、事業運営にはどのように取り組みましたか。
コロナ禍までは事業評価も高く、当時はいわゆるSaaSバブルの時代でもあったので、エクイティでの調達環境は非常に良好でした。ただ、コロナ禍で解約が増え始めた中、このままでは立ち行かなくなるという危機感がありました。2021年4月には希望退職募集という苦渋の決断も迫られました。
一方で、当時、大手金融機関との大型契約とそれによる金融機関のリテール営業領域向けの事業拡大ポテンシャルが評価され、シリーズDとして30億円の資金調達を実施できたことが当時の資金繰りや今に繋がる新規事業への投資の観点からとても大きかったです。結果的に、会社の規模を縮小させながら、注力領域にリソースを集中させることで、事業単体の収益構造を大きく改善することができました。
- 田村優介(たむら ゆうすけ)|ベルフェイス株式会社 執行役員CAO
- 1989年生まれ、埼玉県出身。筑波大学卒業。 経理・財務領域のコンサルティングおよびアウトソーシング事業会社にて、中小企業から大企業まで幅広い企業のコンサルティング業務およびチームマネジメントに従事。 2020年4月にベルフェイスへ参画。経営企画、財務、経理、広報、総務・労務などコーポレート領域を横断して担当。2025年1月よりコーポレート部部長として財務及びバックオフィス全体を統括。2026年4月、執行役員就任。
「しんがりを務めてくれたメンバー」──ピボットを支えた組織運営の舵取り
ーー ピボット期の組織運営で、特に苦労した点を教えてください。
希望退職の実施を決断した時点では、金融機関向けのリテール営業領域でどこまで事業を立て直せるか、まだ明確な見通しはありませんでした。2021年4月の希望退職から一定の可能性を見出すまでには、約1年間程度の模索期間があったと思います。
新規事業である「bellSalesAI」の開発を進める一方で、「bellFace」の方は新規営業や新規機能開発を停止しながらも、既存のお客さまへの対応を継続する必要がありました。
私たちはよく、bellFace事業を最後まで支えてくれたメンバーを「しんがりを務めてくれたメンバー」と呼んでいました。会社の成長の最前線ではなく、後方を守り抜いてくれた存在として、今でも心から感謝しています。
そんな彼らの支えもあり、2025年8月には、bellFace事業を、上場企業へ事業譲渡することに成功し、以降はbellSalesAI事業に経営資源を集中させる体制に移行しました。しんがりを務めてくれたメンバーも今ではbellSalesAI事業で活躍してくれています。
MRRが約6倍に拡大。Salesforce連携が生んだ急成長

ーー bellSalesAIの特徴、汎用的なAIサービスとの違いを教えてください。
bellSalesAIは、2023年4月頃より開発に着手し、同年11月にテストマーケティングを開始、2024年4月に正式リリースをしました。当初は営業活動の議事録を自動作成する汎用的なAIサービスとして始まりましたが、2024年の夏から秋にかけて、Salesforceへの連携に特化する方向へ方針転換を行い、この意思決定が、その後の成長を大きく左右しました。
汎用的なAI文字起こしサービスと異なり、私たちは営業活動に特化した設計にこだわりました。商談の文脈を理解し、金額や日付といった具体的な情報を、正確な形でCRMに登録できる点が強みです。
たとえば、営業担当者が確認のために口にした数字と、お客さま自身が発言した数字とでは、意味合いが異なります。文脈から誰の発言かを判別し、営業上意味のあるデータだけを正確にCRMへ反映できることが、汎用サービスとの違いだと考えています。

スピード感を求めて選んだ、銀行融資でもエクイティでもない「第3の選択肢」
ーー これまでの資金調達を振り返って、どのような課題がありましたか。
シリーズを重ねることで代表者の株式が希薄化していることに加え、シリーズCやシリーズDのタイミングで高いバリュエーションで投資してくださった株主の皆さまに対して、常に配慮する必要があることが、エクイティ調達上の大きな課題として存在していました。当社はbellFace事業で大きく資金調達を実行した後、bellSalesAI事業へピボットしました。シリーズを重ねることで株式が希薄化し、加えて実際に事業も譲渡していますので、バリュエーションも大きく変動しています。なかなかに複雑な状況です。
また、エクイティでの調達には通常3〜4カ月程度の期間を要します。このスピード感では成長計画の達成に必要な投資資金が間に合わなくなる可能性も存在していました。
こうした背景から、株式の希薄化を避けながら迅速に資金を確保する手段として、銀行融資やエクイティとは異なる「第3の選択肢」であるベンチャーデットの活用を模索することになりました。
ーー Flex Capitalとの出会いから、資金調達実行までの経緯を教えてください。
実は1年ほど前にもFlex Capitalへ資金調達の相談をしていました。当時はbellSalesAIの売上規模がまだ小さかったこともあり、その時点では実行に至りませんでした。
今回の資金調達ラウンドに際して改めて調達方法を検討していたところ、新規で投資いただいた株主より改めてご紹介を頂き、取引に繋がったという流れです。
ーー Flex Capitalの審査プロセスについて、実際に感じたことを教えてください。
驚いたのは、審査のスピードです。先行して審査を進めて頂いていた他のベンチャーデットプレイヤーがいたのですが、Flex Capitalの審査スピードの速さもあって、両社より同日に実行頂くことができたのは印象的でした。
また、これまでの資金調達では、代表が投資委員会の前に必ず面談を行うのが通例でした。Flex Capitalではオンライン面談で完了しますし、「財務や会社の事業戦略を説明できる方であれば、面談相手は必ずしも代表であることを求めない」ということにも驚きました。それだけスピード感と自信のある審査体制が整っているのだと実感しました。
資料提出についても、システムへのアップロードと銀行口座の連携のみで完結し、負担は特に感じなかったです。直前にシリーズEの資料を準備していたため、既存の資料を活用してスムーズに進められた点も、審査の速さを加速できた要因だったと思います。
前倒しの意思決定を支えたベンチャーデット──エンジニアリング投資と資本政策の両立
ーー エクイティ調達の直後にベンチャーデットを活用することについて、社内ではどのような反応がありましたか。
Flex Capitalのベンチャーデットを活用する最大の目的は、エンジニアリング投資の前倒しでした。当初の計画よりもエンジニア組織の強化が順調に進んでいたことを受け、さらにシステム開発を前倒しで実現したいというニーズが社内で生まれていたからです。
社内からは、追加でエクイティ調達をした直後にデットも活用するのかという声も聞かれました。事業が成長を続け、利益を生んでいる環境であれば、時間が経てば経つほど手元の資金は自然と増えていきます。ただ、それを待っていては、開発を前倒しで進めるタイミングに間に合いません。だからこそ、資金が自然に増えるのを待たず、早いタイミングで手元資金を厚くし、開発投資に充てたいというニーズがありました。
この考え方を率直に説明したことで、株主の皆さまにも納得していただけました。また、既存株主との関係性を踏まえて追加のエクイティラウンドを組むよりも、ベンチャーデットで対応する方が合理的だという判断もありました。
銀行との交渉も並行して進めていましたが、既存の借入残高の影響から検討が長引く可能性があり、前倒しのタイミングに間に合わない恐れがありました。そこで、銀行との交渉は継続しながら、ベンチャーデットを別軸で検討するという判断をしました。
金利は高くなりますが、エンジニアリング投資を早期に実現できれば、外部委託にかかる費用を抑えられます。長期的に見れば、前倒しのためのデット調達によって発生する利息分は十分に回収できるという説明で、取締役会の承認を得ました。
──次の調達に向けた資本戦略と経営者へのメッセージ
今回の資金調達はシリーズEという調達ラウンドの名称になっているものの、bellSalesAI事業への事業ピボットの経緯もあり、実態としてはシリーズBに近いフェーズだと捉えています。AI時代のモデルケースと言われるような企業になるべく、今後もさらなる成長を目指す方針です。
ーー 今後の資本戦略について教えてください。
更なる成長を見据えたラウンドを実施していきたいと考えています。あわせて、これまで生き延びるために積み重ねてきた借入の整理を実施し、金融機関とのポートフォリオを見直すことも、今後、事業がさらに伸びた段階で進めていきたいと思っています。
エクイティでの調達には半年程度の準備期間が必要になる場面もあります。Flex Capitalにはそうした期間、成長のスピードを緩めずに事業を進めるために、資金面で支援していただけるとありがたいと思っています。
ーー 同じフェーズで資金調達に悩む経営者へ、メッセージをお願いします。
銀行とは異なり、成長性を見た上でデット融資を受けられるFlex Capitalのようなサービスは、銀行融資やエクイティとは違う「第3の選択肢」として、非常に価値のあるものだと思います。成長を止めないためのスピード感を意識された設計であることが大変魅力的で、同じような成長フェーズにある経営者の方々にも、ぜひ検討していただきたいです。
ーー本日はありがとうございました。