TOP ご利用事例 新興国のライドシェアドライバーに金融インフラを届ける 株式会社── HAKKI GROUP が Flex Capital のベンチャーデットで切り拓く、グローバル成長の資金戦略

新興国のライドシェアドライバーに金融インフラを届ける 株式会社── HAKKI GROUP が Flex Capital のベンチャーデットで切り拓く、グローバル成長の資金戦略

株式会社 HAKKI GROUP 様
株式会社HAKKI GROUPは、新興国におけるライドシェアドライバー向けのファイナンス事業を展開するスタートアップです。ケニアを皮切りに、南アフリカ・インド・タイへと展開を広げ、独自の信用スコアリングモデルにより、これまで現地の既存金融機関から融資を受けられなかったドライバーにも車両購入資金を提供しています。2022年度には事業黒字化を達成し、現在はエクイティ調達を積み上げながら、各国でのポートフォリオ拡大を加速させています。
成長フェーズにおける機動的な資金確保の手段として、同社は Flex Capital のベンチャーデットを活用しました。審査スピードの速さと資金使途の自由度の高さが決め手となり、新規金融機関との交渉では読みにくいタイムラインを補完する形で、必要なタイミングで必要な資金を確保することに成功しました。
本記事では、グループ経営企画担当の阿部夢果 さんに、Flex Capital 導入の経緯や、グローバル展開を見据えたエクイティとデットの使い分けについて伺いました。

目次

ライドシェアドライバーを支える「金融インフラ」──独自スコアリングで既存金融の空白を埋める

ーー HAKKI GROUP の事業内容と、その社会的な意義について改めて教えてください。

私たちは、新興国におけるライドシェアドライバー向けのファイナンスリース事業を展開しています。ドライバーの方々の多くは、車を自ら所有しているわけではなく、事業用に車の貸与を受けて仕事を始めます。そんな方々が 自分の車を持てるようになるための金融商品の提供です。

ライドシェアアプリドライバーは、現地では比較的始めやすい仕事であると同時に、稼働エリアや稼働率といった KPI を達成していくことでオフィスワーカーよりも高い収入を得られる職業として、現地で重要な労働の担い手になっています。ドライバーの皆さんに働く車両をファイナンス付きで提供し、完済後その車両を所有できるようにすることにより、将来の資産形成の入口を提供することが、私たちの役割です。

ーー 現地の既存金融機関では対応が難しい層にも融資できる理由は何でしょうか。

大きな差別化要因は、独自の信用スコアリングとオペレーショナルエクセレンスです。モバイルマネーの利用履歴やライドシェアアプリの稼働履歴を分析することで、「この人がどれだけ安定的に稼げるか」を判断するロジックを構築しています。

2024年にはライドシェアアプリ大手のBolt(ボルト)社と提携し、ライドシェアアプリの稼働データに対するスコアリングの精度がさらに高まりました。既存の銀行が持つ与信基準では見えにくい層の信用力を可視化できることが、私たちの事業の強みの根幹にあります。
また、自動車保険・整備・修理など、ドライバーという職業の性質上必ず必要になる要素を包括的にサポートすることで、安定して働き続け、返済を継続できる状態を作ります。

 

ウガンダでの原体験から、ケニアへ──現地で掴んだ事業の手触り

ーー 阿部さんが HAKKI GROUP に参画された経緯を教えてください。

きっかけは、大学時代にウガンダで7ヶ月間を過ごした経験です。現地で生活する中で、ビジネスを通じた雇用創出に直接関わることへの意義を強く感じるようになりました。

帰国後、ちょうどコロナ禍にある中、オンラインでのインターン探しをしていたときに HAKKI GROUPと出会い、2020年前半にインターンとして参画しました。その後、大学を卒業する前にケニアに渡航し、現地で資金調達やオペレーション構築など幅広い業務に携わりました。実際に現場で手を動かした経験が、正式に入社する決定打になりました。

ーー ケニアでの業務を通じて、日本との違いで印象に残ったことはありますか。

一番感じたのは、デジタルリテラシーの格差です。現地ではパソコンを個人で所有・利用できる環境が整っていないことが多く、オフィスソフトの操作やビジネスメールの作成といった基本的な IT スキルから新入社員を教育する必要がありました。日本の新卒採用と比べると、そこが大きく異なる点です。

ただ、だからこそ「教育や機会提供」そのものがビジネスになり得る市場だという確信も深まりました。現地でオペレーションを組み立てながら、この事業が果たしている役割の大きさを体感できたことは、今の仕事への向き合い方にも直結しています。

ーー 現在の役割について教えてください。

グループ経営企画担当という肩書きを使っていますが、一言で言うと「事業側で手が足りないところに入る」役割です。タイの法人立ち上げへの関与など、グループ全体のさまざまな領域に横断的に関わっています。「経営企画」という名称は汎用性が高く、そういった動き方をする上で使い勝手がよいと感じています。現在は日本側からグループ全体のファイナンスおよびコーポレートプランニング領域を主軸に担っています。

  • 阿部夢果 | 株式会社HAKKI GROUP / Group Corporate Planning
  • 学生時代に東アフリカ・ウガンダでのインターンを経験後、HAKKI GROUPのケニアにおける中古車ファイナンス事業立ち上げ時にインターンとして参画。大学卒業後に入社し、ケニアでの事業立ち上げ、会計監査対応、クロスボーダーでの戦略事業提携などを担当。現在は持株会社である日本法人で、資金調達、子会社管理などを担当。

ケニアから南アフリカ・インド・タイへ──分散と成長を両立するグループ戦略

ーー 現在のグローバル展開の状況と、今後の展開方針について教えてください。

ケニアで事業をスタートし、その後、2025年から南アフリカとインド、2026年からタイでのオペレーションを開始しています。各国の現地規制や顧客のニーズに応じて、購入オプション付きオペレーティングリースとファイナンスリース[1]を使い分けながら展開しています。

グループ全体の方針として、特定の1か国にポートフォリオが偏りすぎないよう、分散を意識しています。新興国は為替リスクや地政学的リスクが相対的に高いため、各国のポートフォリオの適切な分散を重視しています。

ーー この2年間でグループ子会社が1社から4社に増えました。今後の管理体制についてはいかがでしょうか。

子会社が増えたことで、ホールディングス全体をよりシステマチックに管理する仕組みの構築が急務になっています。資金調達を安定的に継続できることを大前提に、今後もさらに展開国を広げていきたいと考えています。展開国を増やしながら各国でポートフォリオを着実に積み上げていくと同時に、各国でのユニットエコノミクス改善や新たな事業創出にも並行してトライしているところです。

[1] オペレーティングリース:資産の所有権はファイナンス会社に残ったまま、リース料を支払って資産の使用権を得るモデル。ただし、HAKKI GROUPの場合は満期で廉価での購入オプションを付与。

ファイナンスリース:固定資産を利用目的で保有する場合に用いられるファイナンス手法。割賦販売や資産を担保に取ったローンが該当する。

黒字化を武器にデット調達へ──Flex Capital を選んだ理由

ーー これまでの資金調達の変遷と、Flex Capital のベンチャーデットを検討し始めた背景を教えてください。

創業初期は借り入れに苦戦することが多く、まずエクイティ調達で自己資本を積み上げ、それを土台に融資をとりつける流れでスタートしました。2022年度に黒字化を達成できたことで、「海外B2Cのファイナンス事業」という、金融機関から見て扱いの難しいビジネスモデルであっても、融資の道が開けるようになっていきました。

これまでは株主として出資を頂いた金融機関系CVCの親銀行からの融資が中心でした。ただ、昨年末頃から必ずしも資本的繋がりのない金融機関との融資取引も少しずつ増え、複数の金融機関と同時並行で話を進めている中で Flex Capital を知りました。

当社事業は、その特殊性から、多くの金融機関で前例のない案件として取り扱われます。新規の金融機関との交渉はタイムラインが読みにくく、「2ヶ月で」と言われても実際には4~5ヶ月かかることも少なくありませんでした。その点、Flex Capital は審査から実行までのスピードが非常に速く、必要なタイミングに資金を確保できるという点が大きな決め手になりました。

ーー 実際の審査・実行プロセスを経ての印象はいかがでしたか。

金利面で柔軟な相談ができたこと、そして無担保・無保証で対応いただけたことが特にありがたかったです。

私たちのビジネスは、前述の通り海外でのファイナンス事業になるので、借り入れた資金がそのファイナンス事業の原資とできるかどうかが事業の根幹に関わります。Flex Capitalの融資は資金使途に制限がなく、海外への送金に関する自由度が高いことも、非常に重要なポイントとなりました。

また、審査プロセスにおける対応負荷の低さも印象に残っています。並行して交渉を進めている他の金融機関に比べ、提出が必要な資料は明らかに少なく、スムーズに進めていただきました。社内リソースが限られるスタートアップにとって、審査対応の負荷は意外と大きいので、そこへの配慮は非常に助かりました。

デット・エクイティ・レシオ 目線を引上げへ──ROE最大化を見据えた資本戦略の設計

ーー エクイティとデットをどのように使い分けていますか。

これまではデット・エクイティ・レシオ[2]が1倍を超えないようにコントロールしてきました。各国での事業は、立ち上げから数年以内はキャッシュフローが不安定な時期もあるため、安定的な経営の維持に向け、自己資金を一定程度厚く保つことを優先してきたからです。

一方で、各国でトラックレコードが積み重なってくると、キャッシュフローの見通しが立てやすくなります。今後は市場における評価を高めるために高いROEを実現したいと考えており、そのためにはデット・エクイティ・レシオを段階的に引き上げていく方針です。そのためにデット調達の拡大は、これからさらに積極的に進めていかなければならないと考えています。

ーー 今回の調達を経て、今後の資金計画はどのようにお考えですか。

今後、各国でポートフォリオをアグレッシブに拡大していくとなると、過去の借入の返済分の折り返しなども含め、毎年数十億円規模の融資調達が必要になります。現在、私たちが積極的に探しているのは、「単発融資で終わらない関係」です。入り口は比較的小さな金額であっても、今後継続的に枠を拡大しながら使い続けられる──そういう関係を持てる金融機関を増やしていきたいと考えています。Flex Capital とも、そういった長期的なパートナーシップを築いていけたらと思っています。

上場もマイルストーンの一つとして視野に入れています。上場企業になればアクセスできる資金調達ソースが大きく広がるという点も、判断の重要な軸の一つです。ただ、どのタイミングで上場するかによってどういった成長曲線を描けるかが変わります。市場環境を見ながら、目的に照らして最適なタイミングを判断していく必要があります。デットの調達環境が整っているかどうかも、そのタイミングを見極める上でのファクターになります。

もう一つ大きな視点として、私たちが事業を展開しているケニアでは、UberとBoltの2つのアプリが止まると、東京でいう電車とバスが一気に止まるほどのインパクトがあります。それほどまでに交通インフラとして定着しています。ライドシェアドライバーがフルタイムの職業へ、ライドシェアアプリが都市交通インフラへと変わっていくこの潮目の中で、私たちはそのインフラを支える事業として展開国をさらに広げていきたいと考えています。そのためにも、安定的かつ継続的な資金調達の環境を整えることが、今後の成長の大前提になっています。

[2] 負債÷純資産で算出される財務指標。一般的に数値が低い方が、財務安定性が高いとされるが、事業成長や収益性向上に向けた事業投資のために、一定の財務レバレッジを効かせる(数値を高める)ことも効果的とされる。

「東南アジアに投資できるなら、アフリカにも投資できる」──日本市場への問いかけ

ーー 次の成長フェーズで最も重要だと考えている経営資源は何でしょうか。

人的リソースです。システム開発の加速、ライドアプリ事業者の提携のさらなる深化、他の事業会社とのシナジー探索と提携──目指したいことは多くあります。しかし、それらを実現するためのチーム体制がまだ十分に整っていないことが、目下最大の課題です。

求める人材像を一言で言うと、「現場にいながら、日本本社とも連携し動ける人」です。私たちが展開しているのはすべて新興国なので、現地への出張や駐在に前向きであることが前提になります。また、現地のオペレーションチームとのコミュニケーションと、日本本社とのやりとりを両立するために、英語と日本語の双方が必要になるケースも多くあります。そうした条件が重なると、人材プールはどうしても狭くなります。

必ずしも日本人でなければならないとは思っていません。ただ実際には、日系企業でアフリカ展開に関心があり、現地と日本を行き来しながら働ける人材となると、かなり限られてくるのが現状です。その中で優秀な人を採用できれば、事業全体の成長を大きく加速させることができます。だからこそ、採用は今この会社最大の成長ドライバーであり、最も力を入れて取り組まなければならないポイントだと感じています。

ーー これまでの採用はどのように行ってきたのでしょうか。また、今後はどのようなアプローチを考えていますか。

これまでは採用する人数そのものが少なかったこともあり、スカウト送信などの採用媒体の活用を積極的に行うというよりも、リファラルやご本人から強くアプローチいただくというルートでの採用が中心でした。

ただ、今後はそれだけでは人数が追いつかなくなります。このインタビュー記事のように、私たちの事業や想いを外に発信していくことで、「面白そう」と感じてくれる人との接点を増やしていきたいと考えています。直接的に関連する業務経験がなくても、新興国でインパクトを出すことに関心がある方には、ぜひチャレンジしていただければ嬉しいです。

ーー 同じ領域で展開している競合他社はありますか。

「ファイナンスという手法でドライバーを支援する」という切り口に限ると世界でも数社程度ですが、より広くとらえると類似する会社はいくつかあります。

私たちより規模の大きい競合は複数あります、展開国や提携先ライドアプリ事業者という観点では各社で棲み分けがされており、直接的に競合しているというよりは、それぞれの地域でマーケットを開拓している状況です。私たちはケニア・南アフリカ・インド・タイという展開国の組み合わせが独自のポジションになっており、ここで着実にトラックレコードを積み、次なる国に進出できることが差別化につながると考えています。

ーー 大企業との連携についてはいかがでしょうか。

自動車系や部品供給系の企業との親和性が高いと感じています。私たちは、現在、各国でファイナンス対象となる車両を、ほぼすべて日本車で運営しています。せっかく日本発で世界に出て行くなら、他の事業会社ともシナジーを作りながら、「オールジャパン」でアフリカをはじめとする新興国でのプレゼンスを一緒に作っていく──そういうフィロソフィーを持って動いていきたいと思っています。

ーー 最後に、この記事を読んでくださっている方へメッセージをお願いします。

金融機関や事業会社の方々に向けては、ご融資の相談や協業の検討など、一度コミュニケーションをさせていただきたいと思っています。私たちは現地に拠点を持ち、実際にオペレーションを構築している会社です。今は検討が難しくても、まずは対話をさせていただけるとありがたいです。

採用という観点では、私自身もスタートアップの知識ゼロで学生として入り、さまざまな経験を積ませていただきました。直接的に関連する経験がなくても、新興国で何かしらのインパクトを出したいという方に、ぜひチャレンジしていただければと思います。

個人的な想いとしては、日本ではまだ「アフリカは難しい」というフィードバックを受けることが多いのが実情です。でも、東南アジアに投資できるなら、アフリカにも投資できると私は思っています。フィリピンはよくて、ケニアがダメな理由が「経験がないから」なら、日本水準で受け入れられるガバナンスを敷いて、安心して投資いただける最大限の対応を続けることでそれを覆したいと思っています。私たちが、日本からアフリカ・新興国ビジネスへの入り口になれたら、それがこの仕事を続ける大きな意義の一つだと感じています。

ーー 本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

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