TOP ご利用事例 社会的インパクトを資本市場へつなぐ──インパクトサークルがFlex Capitalのベンチャーデットで広げた「資本戦略の選択肢」

社会的インパクトを資本市場へつなぐ──インパクトサークルがFlex Capitalのベンチャーデットで広げた「資本戦略の選択肢」

インパクトサークル株式会社 様
インパクトサークル株式会社は、社会的インパクトの可視化サービスを事業会社、金融機関、自治体向けに提供するスタートアップです。ESGの義務的な開示対応にとどまらず、「社会的な価値を可視化することで、新しい投資・資金調達・顧客獲得を生み出す」という独自の切り口で、インパクトを事業成長の起点へと転換することを目指しています。

シリーズBに向けた成長加速フェーズにある同社は、これまでのエクイティ調達に加え、株式の希薄化を抑えながら、人材採用強化とシステム投資を加速させるための資本政策上の戦略的な選択として、今回初めてFlex Capitalのベンチャーデットを活用しました。

本記事では、代表取締役社長/CEOの高橋智志さんに、創業の背景からFlex Capital導入の経緯と決め手、そして今後の事業構想まで詳しく伺いました。

目次

「金融が届かない人々」への問いから生まれた会社──創業の背景とミッション

ーー まず、インパクトサークルを創業された経緯から教えてください。

前職では、金融包摂型のFinTechスタートアップで日本や東南アジアの低所得層向けに金融サービスを届ける事業に携わっていました。フィリピン、カンボジア、インドネシアで事業を展開する中で、強く感じたことがあります。「社会的に意義のある取り組みをしていても、その「価値」が可視化されていなければ、投資家にも事業会社にも伝わらない。経済性と社会的インパクトを両立させる仕組みそのものがまだ存在していない」ということです。

「社会的インパクトが循環する仕組みを作りたい」──その問いを突き詰めた先に、インパクトサークルの創業があります。

ーー インパクトサークルが提供するサービスの概要を教えてください。

当社のサービスの核心は、社会的インパクトの「可視化」です。ESG開示支援を手がける企業は他にも存在しますが、その多くは義務的な開示対応やプロトコルの遵守を支援することを主軸としています。
当社が目指しているのは、それとは異なります。社会課題の解決を定量化・可視化することで、投資家からの資金調達を促したり、顧客や人材の獲得につなげたりする──つまり、「可視化を手段として、事業成長や新しいマーケットを生み出す」ことです。

ESGの枠組みを超えた幅広いテーマを扱い、独自のR&Dを通じて蓄積したノウハウを基盤に、コンサルティングとシステム提供を組み合わせながらお客さまと一緒に答えを作っています。

昨年から今年にかけて事業は順調に成長しており、外部からのアワード受賞など、外部評価も得られています。

ーー 中長期の構想についても聞かせてください。

当社が最終的に目指しているのは、「インパクト可視化プラットフォーム」の構築です。社会的インパクトが適切に可視化されることで、インパクト投資や融資を呼び込む市場が形成され、資金のみならず、人材を含めたリソースが循環していくエコシステムを作る、そのための土台となるプラットフォームを作ることが、この会社の存在意義です。

そのためにまず必要なのは、「こういう可視化をしたら、こういうリソースが動いた」という事例の積み上げです。向こう1〜2年は、事業会社、金融機関、自治体といった異なるステークホルダーの皆さまと、具体的な成功事例をできる限り多く作っていくことに集中していきます。

  • 高橋智志|インパクトサークル株式会社 代表取締役社長/CEO
  • 金融包摂型FinTechスタートアップであるGlobal Mobility Service株式会社の創業メンバー/取締役事業本部長として、日本、フィリピン、カンボジア、インドネシアの事業開発およびVC・事業会社からの資金調達を統括。創業から社員数300名に至るまでの事業グロースを経験した後、インパクトサークル株式会社を創業。

エクイティとデットを「組み合わせる」という経営判断──資本政策の基本方針

ーー これまでの資金調達の経緯と、今回の資本政策の考え方について教えてください。

これまでシード、プレシリーズA、シリーズAと計3回のエクイティ調達を行ってきました。VCからのリード投資に加え、事業会社等からも出資を受けており、エクイティ調達累計は約6億円になります。現在は次回ラウンドに向けた成長加速フェーズにあります。

今回の資金調達にあたっては、エクイティとデットを組み合わせる方針を取りました。株式の希薄化を一定程度抑制しながら、成長投資に必要な資金を確保する。デットファイナンスをうまく活用することで、エクイティ調達と次のエクイティ調達の間をつなぎながら、事業のスピードを落とさずに動ける状態を作ることが狙いです。

ーー 資金使途と、エクイティとデットの使い分けの考え方について聞かせてください。

大まかな考え方として、長期的なシステム開発や先行投資にはエクイティを充て、目の前に見える成長投資や運転資金などの一定の赤字期間を埋める部分はデットで回す、というバランスを意識しています。

具体的に言うと、採用に伴う人件費の増加は、成果が出るまでに一定の時間がかかる先行投資でもあり、成長のための投資でもあります。ただ、そのコストをすべてエクイティで賄おうとすると希薄化が大きくなりすぎる。一方で、短期的な成長機会が見えている中であったり、事業が健全に進んでいる中での人材投資であれば、デットで賄いながら返済していくことが合理的です。今回のベンチャーデットの主な資金使途も、主に人材強化を予定しています。

社内での意思決定については、私が中心になりながら、VC出身のメンバーもいるので、チームで議論しながら進めています。

イベントでの出会いから、2〜3年越しの本格活用へ──Flex Capital導入までの経緯

ーー Flex Capitalを知ったきっかけと、導入に至る流れを教えてください。
最初のご縁は、2〜3年前のイベントです。当時はまだベンチャーデットを活用するニーズが具体化していなかったので、「いずれタイミングが合えば」という感覚でした。その後も定期的にご連絡をいただいていたのですが、今回シリーズBに向けた成長投資をどう賄うかを本格的に検討し始めたタイミングで、改めて話が動き始めました。

ーー 検討の過程で、どのような論点が社内で議論されましたか。

ベンチャーデットといってもさまざまなスキームがあります。新株予約権(SO)の提供を求められるものもあれば、純粋なデットに近いものもある。条件も当然、各社で異なります。その中で、自社にとって本当に合うものは何かを整理することが、検討の出発点でした。

コスト面も当然議論しましたが、「このタイミングで資金を確保することで得られる成長のブースト効果」と「それに対するコスト」を冷静に比較した上で、導入を判断しました。

ピュアなデットスキームと、スタートアップへの理解度──Flex Capitalを選んだ2つの理由

ーー Flex Capitalを最終的に選んだ決め手を教えてください。

大きく2点あります。

1点目は、スキームがピュアなデットに近いという点です。SOが不要なため、株式が希薄化せず、資本政策上の複雑な検討が不要で、社内での合意形成がスムーズでした。使う側の「使い勝手」として、これは非常に重要なポイントです。

2点目は、スタートアップファイナンスに対する理解度の高さです。審査を通じて感じたのですが、一般的な金融機関の担当者とは明らかに異なる理解があります。希薄化の意味、ランウェイの重要性、成長フェーズにある企業の財務構造の特性──こうした前提を最初から共有できていることで、説明にかかるコストが大幅に下がりました。

ーー 一般的な金融機関との違いは、具体的にどのような場面で感じましたか。

通常の金融機関では、初回の借り入れまでに2カ月程度かかることが多いです。一方、Flex Capitalは最初の相談から実行まで約1カ月弱というスピード感でした。スタートアップにとって、この時間の差は非常に大きいと感じます。

審査プロセスの中でも、差を感じました。一般的な金融機関に資料を提出すると、「この数字はどういう意味ですか」「なぜこう伸びる想定ですか」といった説明が何度も必要になります。スタートアップの成長モデルに必ずしも精通していない担当者に、前提から説明していかなければならない。

Flex Capitalの場合、提出した資料に対して返ってくる質問の数が非常に少なく、スピーディーに審査が進みました。これはAIを活用した審査の仕組みも関係しているようですが、使う側としては「説明コストが低い」という体験として純粋に有難かったです。スタートアップにとって時間は有限のリソースです。それを最小化していただけることは、単純なようで大きな価値があります。

ーー Flex Capitalと一般的な金融機関との本質的な違いは、どこにあると感じていますか。

財務的に安定した企業には、金融機関の方から融資の提案が数多く来ます。しかし、ベンチャーデットが最も必要とされるのは、そうした状況に至る前の段階です。先行投資が続いて赤字フェーズにある、または急成長中で財務指標が安定していない──そういったスタートアップに対して、過去の実績数値のみを重視して評価しがちなのが一般的な金融機関の審査です。

Flex Capitalは、その数字の背景にある成長ストーリーや事業の将来性を理解した上で判断してくれる。スタートアップが最も資金を必要とするタイミングに、スタートアップの言葉で話せる相手がいることの意味は、想像以上に大きいと感じています。

「次に使える条件が見えると、付き合い方が変わる」──Flex Capitalへの期待と改善要望

ーー Flex Capitalに対して、改善要望や今後への期待があれば聞かせてください。

「将来の与信条件の透明化」といったあたりでしょうか。「こういった成長を達成したら、次はこういう条件でこういったファイナンスが使える」というロードマップが見えると、経営側としても「それを目指して動こう」という判断ができるようになります。

一般的な金融機関では、この「見通し」がほぼ見えません。ですので、Flex Capitalがそれを提供できるなら、金融機関との差別化として非常に大きな意味を持つと思います。スタートアップが「成長すればするほど、より良い条件で使える」という見通しを持てると、長期的なパートナーとして付き合っていく動機になる。より多くのスタートアップが集まる理由にもなるのではないでしょうか。

また、もう一点加えると、定量的な数値だけでなく、定性的なポテンシャルをどう評価するかという観点も重要だと感じています。先行投資が大きく、数字に現れにくい段階にあるスタートアップは少なくありません。そうした「定性的なポテンシャル」をどう評価するかに、Flex Capitalのようなプレイヤーが深く関与できるようになると、ベンチャーデットの可能性はさらに広がると思っています。

事例の蓄積から、インパクト可視化プラットフォームへ──今後の展望と求める仲間

ーー 今後の事業展望と、どのような人材を求めているか聞かせてください。

直近1〜2年の優先課題は、インパクト可視化サービスの導入事例をできるだけ多く蓄積することです。事業会社、金融機関、自治体それぞれで、「こういう可視化をしたら、こういう変化が生まれた」という実績を積み上げることで、中長期に目指すプラットフォームへの道が開けていきます。

今後はエクイティとデットを組み合わせながら、人材採用強化とシステム先行投資を着実に進めていく計画です。Flex Capitalとも、企業成長に合わせて追加の調達など次の活用について継続的に相談していきたいと考えています。

採用については、「社会的な価値が資本主義にもっと組み込まれるべきだ」という思想に共感できる方にぜひ来ていただきたいと思っています。当社のサービスは、与えられたプロトコルをこなすというよりも、正解のない問いに向き合いながら新しい仕組みを作っていくR&D的な要素が強い仕事です。そのプロセスを楽しめる方にとっては、非常に刺激的な環境だと思います。

バックグラウンドは多様で、大手コンサルファーム出身者もいれば、事業会社や金融機関出身者もいます。社会的インパクトと事業成長の両立に関心のある方は、ぜひ一度ご連絡をいただければと思います。

ーー 最後に、この記事を読む他のスタートアップ経営者やCFOの方々へメッセージをお願いします。

資金調達の手段は確実に多様化しています。エクイティだけが選択肢ではなく、デットも含めてさまざまな組み合わせが可能になってきています。それはスタートアップにとって本当にありがたいことだと思います。

ただ一方で、デットファイナンスには利払いという借入期間中に発生するコストが存在します。そのコストをかけることで得られる成長のブースト効果が、自社の事業フェーズにとって本当に意味のあるものになるのかどうか──ここを冷静に判断することが大切です。ランウェイを伸ばすためなのか、成長投資を加速するためなのか、目的によって最適な使い方も変わります。

「エクイティ調達だけが道ではない」という選択肢の広がりを活かしながら、自社の状況に合った資本戦略を描いていくのがよいと思います。そして、同じような価値観を持つプレイヤーが集まり、お互いの事業を応援し合えるエコシステムが広がっていくことを、心から願っています。

ーー 本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

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