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調達は“ジグソーパズル”──XAION DATAが語る不確実性を下げる資金戦略とは

株式会社XAION DATA 様
AIとデータを基盤に事業を展開する株式会社XAION DATA。同社は、インターネット上に分散する情報を統合・構造化する独自のデータ基盤を軸に、HRやセールス支援領域におけるインテリジェンスプラットフォームの提供や、大企業向けのAIソリューションの提供を行っています。

アーリーフェーズから複数事業を同時並行で推進するという複雑性や難易度の高い事業戦略を採用・遂行してきた当社にとって、成長を実現するための資金調達は、常に経営上の最重要テーマの一つとして存在しています。

いかにして効率と確実性を確保した資金調達を実現するかというテーマに対し、同社が重視したことの1つが「意思決定スピード」です。複数の調達手段とその提供プレイヤーとの関係を並行させ、資本効率と不確実性をコントロールすることは成長戦略そのものと密接に結びつきます。

本インタビューでは、財務戦略のねらいを実現する資金調達の実務や、その中でFlex Capitalを活用するに至った意思決定プロセスについて、CFOの金谷さんにお伺いしました。

目次

事業概要について

AI×データで分散情報を統合──1,000万人規模のプロファイル基盤を構築

ーー まず、事業概要について教えてください。

金谷:
当社は、AIとデータを活用し、インターネット上に分散する情報を統合・構造化する事業を展開しています。社名の「XAION DATA」は、後ろから読むと「Data on AI X」となり、データを基盤としてAIを活用していくという思想を表しています。

AIは、同じアルゴリズムを用いても、どのようなデータを、どのような持ち方で保有しているかによってパフォーマンスに大きな差分が生まれます。近年は「データこそが競争優位を生む」という議論が広がってきましたが、当社は6年前の創業時点からその思想に立ち、「いかにデータを整理・構造化するか」という領域に技術を投下してきました。

具体的には、SNSや各種プラットフォームなど、インターネット上に分散する情報を統合し、人物単位でプロファイル化するデータベースを構築しています。現在は約1000万人規模の人物データ、500万社規模の企業データ、5000万件規模の求人データを保有しており、インターネット上では分散して使いづらい状態にある情報を、当社のプラットフォームを介することで整理された形で利用できるようにしています。そのうえで、検索・分析などの用途にAIを組み合わせ、多様な業務への実装を進めています。

▼関連リンク

・AUTOHUNT:https://lp.autohunt.jp/

・AUTOBOOST:https://www.autoboost.jp/

  • 金谷 優樹 株式会社XAION DATA CFO / CSO
  • 大阪大学大学院工学研究科卒。2014年ゴールドマン・サックス証券入社。投資銀行部門にて、国内外のテクノロジー企業に対して、M&Aおよび資金調達の助言業務に従事。2018年インベスコ・アセット・マネジメント入社。営業本部や運用本部など各部でのローテーションを経験したのちにリテール営業本部にて大手顧客を担当。投資信託「世界のベスト」の担当として営業推進を行い、2022年度に業界トップの成績を達成。世界のベストの残高は担当開始時約300億円から6,000億円超まで増大。約4,000本あるアクティブ公募投資信託の中で、2022年度のフローランキング1位を記録。2023年7月より現職。

HR&セールスの両輪──市場創出と競合比較、それぞれの戦い方

ーー 現在の事業フェーズと市場の状況をどのように捉えていますか。

金谷:
当社は、企業のHR活動とセールス活動の2つの企業活動の成果を最大化するAXプロダクトを展開しています。HR活動のAXプロダクトとセールス活動のAXプロダクトでは、展開する市場環境がまったく異なるため、戦い方も異なります。

セールスのAX市場は、すでに一定のプレイヤーが存在する市場であり、お客さまに比較検討をしていただいたうえでご選択いただくケースが多くなっています。最近では、比較検討の結果、当社の開発力の強みを評価頂き、選定いただく機会が増えてきているという感触を持っています。

一方、HRのAX市場は市場そのものを創出しているフェーズにあり、周囲に競合がひしめいているというよりも、市場を創りにいくアーリーな段階です。従来の中途採用市場は、いわゆるホワイトカラーの登録者データベースを中心に約300万人規模で形成されてきましたが、当社はそこに含まれない潜在層、すなわちインターネット上に情報は存在するものの採用市場には登録されていない人材に対してリーチしていく新しい市場を切り拓こうとしています。試行錯誤を重ねながら事業を推進している段階です。

加えて、大企業向けにはAIのカスタマイズ開発も並行して進めており、すでに二桁近くの案件を手掛けています。特に人事異動AIなど、人事領域におけるAI活用については一定の強みがあり、金融機関をはじめとする大企業の皆さまにご認識いただく機会が増えています。

CFO参画の経緯──外から支えていた立場から、経営の中核へ

ーー 金谷さんがXAION DATAに参画された経緯を教えてください。

金谷:
創業初期に、共通の知人を介して代表とお会いしたのが最初の接点です。当時は業務委託のような位置付けで、財務面を中心に幅広くアドバイスを行う、いわゆる壁打ち相手として3〜4年ほどゆるやかに関わらせていただいていました。

その後、今から約3年前に「本格的に資金調達を進めていきたい」という話があり、正式に参画することになりました。当社の創業メンバーは2名ともエンジニア出身で、技術面には明るい一方、営業や財務を専門としてきた人材ではありません。私はキャリアの前半でゴールドマン・サックスの投資銀行部門に身を置き、財務・資金調達の助言業務に従事し、後半はインベスコ・アセット・マネジメントで大企業向け営業を担当してきました。CFO出身者の中では珍しいキャリアだと思いますが、財務と営業の両輪を経験してきたことが、当社のフェーズにフィットしたと考えています。

参画のもう一つの背景としては、当社のミッションへの共感があります。当社は「AIとデータで人のポテンシャルを最大化する」ことを掲げていますが、私自身は学生時代に塾講師を経験していたり、もともと教育や人の価値の最大化というテーマに関心が強く、ミッションに共感する部分が大きかったです。また、アーリーフェーズで、これまで自分が挑戦したことのない領域で力を発揮できる機会という点も、意思決定の後押しになりました。

初期の資金調達で直面した課題

ーー 資金調達において直面した課題を教えてください。

金谷:
初回の資金調達は2年前に実施しましたが、当時から当社は複数の事業を同時並行で展開していたため、外部から見ると「何の会社か分かりづらい」という課題がありました。スタートアップは一般的に、ワンプロダクト・ワンソリューションで定義されることが多い中、当社は戦略の下にすべての事業が連関している一方で、その全体像を一言で表現しにくいという難しさがあったと認識しています。

加えて、描いている成長ストーリーに対して、実績の積み上がり方がまだ限定的であったこと、既に存在する市場ではなく新しい市場を創出することをめざしていたことも難易度を高めた要因です。既存市場の延長で価値を説明することが難しい中、将来価値をどう訴求するかには相応の工夫が必要でした。

足元の環境についても触れておくと、スタートアップの資金調達環境は数年前をピークに、全体としては軟調に推移しているという認識です。リスクマネーを供給する銀行や投資家が存在しているという構造自体は変わりませんが、その機運そのものは高まり切っているとは言えず、数年前と比べても調達難易度は上昇していると感じています。

 

デット調達の実務──銀行の論理を理解し、「欲しいタイミングのもっと前から」動く

ーー 銀行借入において工夫された点はありますか。

金谷:
銀行借入において最も重要なのは、「資金が必要になるタイミングよりも、さらに前からコンタクトを取り始めること」だと考えています。これは単なるリードタイムの話ではなく、銀行ならではのルールを踏まえた進め方として必要なことだと捉えています。

銀行との取引関係は、基本的には返済実績と信用の積み上げに基づいて段階的に強化されていくものです。実績のない先に対して、いきなり大きな融資を実行されることは構造的に想定されません。したがって、スタートアップ側から見た合理的な進め方は、まず取引口座を開設し、少額であっても借入と返済を実行して返済履歴を作り、その実績をもとに次の融資枠を広げていくというものです。「小さく始めて、段階的に信用を積み上げる」ことは、銀行のルールに沿った動き方だと言えます。

銀行側のルールを理解したうえで、事前にコミュニケーションを取っておくことも欠かせません。昨年の資金調達がしっかりと形になった背景にも、こうした取引と信用の事前の積み上げ、および銀行側の動き方への理解があったと認識しています。

一方で、銀行の意思決定には一定の時間を要するため、スタートアップが求めるスピード感との間には、構造的なギャップが残る場合があります。これは銀行として然るべき審査・確認プロセスを踏んでいる結果であり、否定すべきものではありません。ただ、時間軸の長さや、意思決定に必要となる情報提供の量は、事業運営上の負荷として正しく認識しておく必要があります。このギャップを前提に、前倒しで動くこと、そして複数の手段を並行させて時間的リスクを分散させることを意識していました。

Flex Capital導入の背景

ーー Flex Capitalを活用された背景を教えてください。

金谷:
ベンチャーデットという選択肢自体は以前から認識しており、資本コストの観点からも、可能であればエクイティより優先的に検討したいと考えていました。

Flex Capitalについて、今回ご相談することになった直接のきっかけは投資家の方からの紹介です。「柔軟に対応してもらえる」という評価を伺ったことが、検討を進める後押しになりました。

実際に、Flex Capitalは初動のレスポンスが早く、検討プロセスも順序立ってテンポよく進んだため、今回の取引に至ったという経緯です。

「スピード」が不確実性を下げる──調達は“ジグソーパズル”

ーー 実際に活用して評価された点を教えてください。

金谷:
最も大きい評価ポイントは、意思決定のスピードです。

資金調達は、複数の手段を並行して走らせることが前提の業務であり、時間的・業務的な負荷が非常に大きくなります。調達全体は「ジグソーパズル」のような構造で、個別のピースが確定しない限り、全体の資金計画が固まらないという特性があります。変動要因が残り続ける期間が長いほど、事業への集中力が削がれやすくなります。

その中で、早い段階で一部のピースが埋まると、残りの座組を具体的に検討しやすくなり、次の意思決定にスムーズに移れるようになります。スピードは、単に「早ければ良い」という話ではなく、不確実性を下げ、調達全体を前に進めるための重要な要素だと考えています。

なお、対応面についても、一般的な銀行と比較すると、対応コストは時間的にも量的にも明らかに少ないです。調達業務を並行で走らせている立場としては、この負荷の軽さは大きな助けになりました。

キャッシュ確保がもたらす効果──交渉力の向上

ーー 資金調達後の変化、効果について教えてください。

金谷:
キャッシュが過度に減少している状態では、投資家や既存株主とのコミュニケーションにも影響が及び、エクイティの交渉力にも少なからず影響します。今回、デットによる資金調達によってキャッシュポジションが改善されたことで、そうした懸念が軽減され、「余計な心配をしなくて済む」状態に近づいたことは大きな変化でした。資金繰りに対する不安が軽減され、経営としての意思決定に集中しやすい環境を整えることができたと感じています。

AIを各領域へ──今後の展開

データ基盤としてのポジション確立へ

ーー 今後の展望について教えてください。

金谷:
採用領域においては、従来のデータベースではアプローチできなかった潜在層に対するリーチを強化し、新しい市場の開拓を進めています。

加えて、当社の基本戦略は「AIを様々な領域に実装していくこと」にあります。大企業向けのAIカスタマイズ開発を含め、複数の案件を同時並行で進めながら成長を図っています。これまでは主に人事領域を起点にAI活用の実績を積み重ねてきましたが、今後はそこから領域を広げていきたいと考えています。

その上で、最終的には、様々なサービスの裏側で当社のデータ基盤とAIが活用されている状態を目指しています。表に出るプロダクトだけでなく、他社のサービスを支えるインフラとしてのポジションを確立できるかどうかが、中長期の鍵になると捉えています。

採用拡大フェーズ──新領域への挑戦機会

ーー 採用について教えてください。

金谷:
現在はエンジニア、ビジネスの双方で採用を進めており、月によっては5〜10名程度が入社しています。複数の事業領域を同時並行で展開しているため、新しい領域に挑戦できる機会が多いことも特徴です。単一の事業・役割に閉じない形でキャリアを築きたい方にとっては、面白いフェーズではないかと思います。関心のある方には、ぜひ一度お話できればと考えています。

ーー 本日は大変ありがとうございました。

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