外食産業のDX基盤構築へ。CRISP代表が語るFlex Capital導入の狙い
CRISPは、パーパスである「日本の外食を、ひっくり返せ。」の実現に向け、クリスプサラダワークスの100店舗体制とクリスプメソッドの進化を遂げる過程において、さらなる成長資金を必要としていました。そのため同社は、必要な資金を適切なタイミングで確保する手段として、Flex Capitalが提供するベンチャーデットを採用することに決めます。その結果、エクイティ調達や従来の融資にベンチャーデットを組み合わせ、総額37億円もの資金調達を実現しました。
本記事では、代表取締役の宮野さんに、導入に至った背景や決め手について詳しく伺いました。
目次
「日本の外食を、ひっくり返せ。」データとテクノロジーで外食産業のDX基盤構築へ
ーー 2014年に「クリスプサラダワークス」を創業された背景を教えてください。
アメリカで暮らしていたころの原体験が影響しています。当時、アメリカのホームステイ先のホストファミリーの父親から誘われて、現地の日本人の方向けに「甘栗を売るビジネス」を始めたところ、驚くほど売れました。日本ではそんなに特別じゃない甘栗が場所をアメリカに変えるだけで、これほど日本人に喜ばれるのかと驚いたんです。
その後、日本に戻ってからは、逆の発想で考えるようになりました。アメリカでは当たり前にあるのに、日本ではまだ広がっていないものを届けられないか。そう考えて、まずはタコスやブリトーといったテクス・メクスのお店をはじめ、 その試行錯誤も含めて辿り着いたのがカスタムサラダ専門店であるクリスプサラダワークスでした。
アメリカのデリでは、量り売りや自分で具材を選ぶサラダが日常に根づいている一方、当時の日本には、そのようなサラダのお店がほとんどありませんでした。そのようなお店を、海外経験のある方や留学経験のある方がいるところに出店すれば受け入れられると考え、好みにあわせて選べるカスタムサラダの提供を始めました。

- 宮野 浩史 | 株式会社CRISP 代表取締役
- 15歳で渡米し、18歳のときに米カリフォルニアで天津甘栗の露天販売商を起業。帰国後タリーズコーヒージャパンで緑茶カフェ業態の事業責任者をつとめた後、ブリトー専門店の起業を経て2014年クリスプサラダワークスを展開。「クリスプサラダワークス」を通じ、DXで外食産業に革新を目指す。
ーー 現在掲げている「日本の外食を、ひっくり返せ。」というパーパスと、事業の特徴について教えてください。
日本の外食産業には、利用者が感じる価値と、業界の構造とのあいだに大きな隔たりがあります。日本の飲食店は消費者視点では、世界と比べてもサービスやおいしさという面で高い水準にあると思うのですが、日本の飲食業界全体に目を向けると、人気店でも経営が厳しかったり、市場や働き手からも必ずしも評価が高い産業ではなかったりする現実があります。
日本の外食産業はとても素晴らしい産業なので、私たちは、そのギャップをテクノロジーと人の力で埋めたいと考えています。自社で運営する店舗に自社開発したテクノロジーを導入し、お客さまと働き手に関するファーストパーティーデータを統合的に集めています。
そして、テクノロジー、データ、現場のオペレーション。この3つに向き合いながら、働く人にも、会社にも、お客さまにもよい外食のあり方をつくっていく。私たちは、こうした考え方を体系化したものを「クリスプメソッド」と呼んでいます。現在はサラダという業態でそれを表現しながら、外食産業のDXに取り組んでいます。
ーー 飲食業界向けの各種業務支援サービスがあるなかで、他社の仕組みを使うのではなく、自社で開発しているのはなぜでしょうか。
お客さまと働き手に関するファーストパーティーデータを統合的に集める必要があり、そして集まったデータを、現場の業務改善にそのままつなげる必要があるからです。飲食業界向けのSaaSは数多くありますが、仕組みを入れるだけで利益が伸びるわけではありませんし、欲しいデータが取れなかったり、データを統合していくことが難しい場合もあります。
店舗の運営は、数えきれないほどの業務の積み重ねで成り立っています。お客さまが何を注文したかというデータだけでなく、誰がいつどこで何回目に注文したか、その注文の定性的な評価、その評価をした時の店舗で誰が働いていたか、その働くスタッフの熟練度やどれぐらいの勤務日数があるかなどをそれぞれ別の仕組みで管理すると、データが分かれてしまう。その結果、会社全体として改善に生かせる情報が見えにくくなります。
だからこそ、私たちは業務運営にかかわる仕組みを自社で整えてきました。そこから得られるデータをもとに、お客さまと働くスタッフの体験をを改善できる体制そのものが、私たちの強みです。ここが、他社との大きな違いだと考えています。

事業計画を深く理解し、大きなリスクを共に背負う姿勢が導入の決め手に
ーー 今回、総額37億円の大型資金調達を実施されましたが、デットファイナンスを活用された理由を教えてください。
当社では、再現性の高い投資の循環がすでにできあがっているためです。
今回のデットファイナンスにより調達した金額については既存のサラダ業態の新規出店並びに新業態開発やM&Aに充てる予定です。店舗運営では、デジタル活用による店舗あたりの利益率改善の成果が見えており、出店によってどの程度の効果が見込めるかを、精度高く予測できる状態になっています。そうした背景から、再現性の高い出店投資については従前より取り組んでいるコーポーレートローンで工面し、一方で新業態開発やM&Aといった不確実性がやや高い領域にはベンチャーデットを充当するといった形で多層的にすることで、資本コストの最適化を狙いました。
ーー 従来の銀行融資だけではなく、Fivotが提供する「Flex Capital」のベンチャーデットを選択された背景は何でしょうか。
新たな挑戦に伴うリスクを適切に見ていただいたうえで、成長資金として活用できるファイナンスを期待していたからです。
一般的な金融機関では、どうしても過去の出店実績の延長線上で評価されやすい傾向があります。しかし、これから当社が取り組もうとしているマルチブランド展開やM&Aは、金融機関にとっては新しい投資につき、評価が難しいものとなります。
その点、スタートアップの事業計画を踏まえ、リスクに応じた融資を検討していただけるベンチャーデットは、当社のフェーズに合った選択肢でした。なかでもFlex Capitalについては、以前から事業責任者の方に資金調達の相談をしていた経緯があり、その流れで今回も相談しました。
ーー 複数のベンチャーデットファンドを検討された中で、最終的にFlex Capitalを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
私たちの事業計画を深く理解し、真摯に議論を重ねてくださったことです。
Flex Capitalの担当者は、単に財務モデル上の数字だけで判断するのではなく、スタートアップを成長させるにはどのような戦略が必要かまで丁寧に見てくださいました。当初提示された条件についても、KPIに基づき事業の再現性や進捗を丁寧に説明することで、事業計画の前提に即した条件の設計がなされていきました。
加えて、担当者だけでなく、決裁者や法務のチームまで事業への理解が行き届いていたと感じた点も大きかったですね。やり取りのたびに認識のずれがなく、安心して進められました。最終的には、一般的なベンチャーデットでは財務制限条項が付されるケースも多い中で、本件ではそれを設けずに融資を実行いただき、当社の実行力をしっかり評価していただけたと感じています。
ーー 審査の過程でどのようなやり取りがありましたか?
プロセスそのものがかなりシステム化され、スピードを伴うものであったこともあり、最初の条件提示は、やや杓子定規になっていたように感じたりもしました。ただ、私たちはKPIをもとに事業を定量的に管理しており、それが足元でも計画通りに推移していることを丁寧にお伝えしました。そうした対話を通じて、担当者が事業の核をより深く理解してくださったのだと思います。
スタートアップの資金調達では、審査の速さももちろん重要です。ただ、それ以上に、事業に関する本質的な議論ができ、ともに大きなリスクテイクをしていただける相手かどうかを重要視します。たとえば30億円を集めるとして、1億円ずつ30社から借り入れる形では、各社と十分に議論を深めるのは現実的ではありません。一定の仕組みによる迅速な与信判断を前提としながらも、最終的には人が事業の本質を見極めるプロセスが重視され、しっかりと向き合ってくださったことが、契約の後押しになりました。
サラダの枠を超え、日常食のDXへ。ともにリスクを担う存在
ーー 今回の資金調達を踏まえ、CRISPの今後の展望についてお聞かせください。
事業の成長は、大きく2つの軸で考えています。ひとつはサラダ市場のさらなる拡大、もうひとつは他業態への横展開です。
まず前提として、健康志向の高まりや、短時間で満足できる食事への需要、さらにデジタルで完結する個別最適な体験は、いまのライフスタイルにしっかり根づいていると感じています。こうした流れを踏まえ、既存の「クリスプサラダワークス」を東京・大阪・神奈川を中心に、再現性高く伸ばしていく。これが1つ目の柱です。
もう1つの柱は、サラダ以外のノンアルコールの日常食への展開です。現在の中核顧客である大規模オフィスビルで働く方々に、例えば月曜日はサラダを選んでいただき、火曜日から金曜日は、私たちのDX基盤を生かした別業態を楽しんでいただく。そうして、同じお客さまの日々の食事の選択肢を、幅広く支えていく構想を描いています。

ーー 長期的な売上目標と、そのなかで今回の調達をどのように位置づけていますか?
2040年に売上3,000億円を達成するという大きな目標を掲げており、今回の資金調達は、その実現に向けた重要な一歩だと捉えています。
ただ、現時点で見ると、目標に対する進捗はまだ1%ほどです。本当の勝負は、ここから始まります。Flex Capitalさんが「日本の外食を、ひっくり返せ。」という私たちのパーパスを理解する中で、事業計画の実現可能性を評価し、大きく支援してくださった意義はきわめて大きいと感じます。
今回調達した資金を活用し、サラダという単一業態の枠を超えていく。その先にあるのは、「クリスプメソッド」による新しい外食の運営基盤です。そこへの投資を、今後いっそう加速させていきます。
ーー Flex Capitalのベンチャーデットは、どのような企業に向いているとお考えですか?
過去の延長線上にある成長ではなく、新しいフェーズへ進もうとしているスタートアップにとっては、非常に有力な選択肢だと思います。
資金調達の手段は次第に多様化しています。仕組みによる迅速な与信判断を強みとするデットファンドも増えてきました。ただ、事業計画の実現可能性や将来の不確実性への対応まで議論でき、数字だけではない部分に深く踏み込んで評価してくれるパートナーは、そう多くありません。
単に資金を早く確保したい、というだけではない。自社の事業の本質を理解したうえで、次の段階に進む際の大きなリスクまで、ともに担ってくれるパートナーを求めている経営者にこそ、Flex Capitalさんは合うのではないでしょうか。深く寄り添う姿勢に、その価値がよくあらわれていると感じています。
ーー 本日はありがとうございました。

