TOP マガジン ベンチャーデットとは|概要・特徴・メリット・銀行融資との違い・資金調達事例をまとめて解説

ベンチャーデットとは|概要・特徴・メリット・銀行融資との違い・資金調達事例をまとめて解説

目次

はじめに

  • 「ベンチャーデットについて知りたい」
  • 「ベンチャーデットのメリット、デメリットから学びたい」

ベンチャーデットは、近年、多くのメガバンクが専門ファンドを設立するなど、スタートアップ企業向けの資金調達手段として注目を集めています。従来、スタートアップの資金調達と言えば、ベンチャーキャピタルによるエクイティファイナンスが一般的でした。しかし、ベンチャーデットの登場により、スタートアップ企業にとって新たな資金調達の選択肢が生まれ、これが国内スタートアップ市場の拡大にも寄与しています。

この記事では、ベンチャーデットの定義や普及してきた背景、メリットとデメリットなど、詳しく解説します。
さらに、ベンチャーデットを利用した事例も紹介し、資金調達計画の一助になれば幸いです。基本的な内容から具体的な活用事例などをご紹介しておりますので、ぜひ最後までご一読ください。

ベンチャーデットとは

ベンチャーデットとは

ベンチャーデットとは、一般的に株式を発行することで資金調達を行うエクイティファイナンスと、銀行などの金融機関から融資を受けるデット・ファイナンスの両方の性質を併せ持つ金融商品の総称のことです(デット・ファイナンスには社債を発行し、引き受けてもらうことで資金を調達する方法も含まれますが、本記事では「融資」に統一いたします)。

国内では、スタートアップ企業向けのデット・ファイナンス、という広義の意味と、スタートアップ企業向けの新株予約権付き融資、という狭義の意味の2つの使い方がされています。

弊社の「Flex Capital」は新株予約権が付かない融資のみを取り扱っておりますが、金融機関が取り扱っているベンチャーデットの多くは新株予約権付き融資であるケースが多いように感じます。
実際に提案を受けた際は、新株予約権の有無を確認することを推奨します。

ベンチャーデットは銀行融資とエクイティファイナンスにあるギャップを埋める資金調達手段

ベンチャーデットは、エクイティファイナンスと一般的な銀行融資の中間に位置する資金調達手段と言えます。特に、アーリーからミドルステージのスタートアップ企業にとって、従来の金融機関からの融資を得ることは困難であり、その主な選択肢はエクイティファイナンス、すなわちベンチャーキャピタルに出資を受けて資金調達する方法が中心でした。

エクイティファイナンスは、多くの場合、株式の希薄化を伴います。これは、新たな株式を発行して投資家に売却することで資金を調達する方法であり、結果的に既存株主の持分比率が減少し、経営上の自由度が損なわれる可能性があります。このため、エクイティファイナンスは、慎重に選択されるべき資金調達手段とされてきました。

一方で、事業収支がマイナスであることが多いスタートアップ企業にとって、銀行融資は難易度が高い商品と言えるでしょう。

ベンチャーデットは、株式の希薄化を抑えて若しくは回避しながら資金調達できる、エクイティファイナンスと銀行融資の間のギャップを効果的に埋める新しい選択肢と言えます。

スタートアップ企業が銀行融資によって資金調達が難しい理由

スタートアップ企業は、その革新的なビジネスモデルや技術によって長期的には大きな利益を生む可能性を秘めています。しかし、初期段階では、事業からの収益が安定しておらず、収益がコストを上回っている企業は多くないでしょう。このため、多くのスタートアップは外部からの資金調達に頼って事業を運営しています。

銀行融資の場合、融資の主な判断基準は返済能力です。つまり、定期的かつ安定した収益が生み出せていないと、銀行からの融資を受けることは困難になります。スタートアップ企業の場合、事業収支が赤字であることが多く、これが銀行融資の大きな障壁となっています。

より革新的なビジネスモデルやイノベーションで社会の課題解決を行い、新たな市場を生み出すことを目的としたスタートアップ企業にとって、目先の収益は重要ではない一方で、返済能力という観点で見ると、安定収益を生み出せていないため、銀行融資による資金調達の難易度は極めて高いと言わざるを得ません。

ベンチャーデットを利用できるスタートアップ企業

一般的にベンチャーデットは、多くのベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けており、安定的な収益を生み出し始めて、事業規模の拡大が期待できるミドルからレイターステージにあるスタートアップ企業によって広く利用されています。

一方で、事業規模が小さく、PMF(プロダクトマーケットフィット)を目指している段階で、外部株主からの資金調達も限定的なアーリーステージのスタートアップ企業が、銀行からベンチャーデットによって資金調達している事例はまだまだ多くないと言えるでしょう。

弊社の「Flex Capital」は、ミドル・レイターステージの企業だけでなく、アーリーステージのスタートアップにもベンチャーデットを積極的に提案しています。スタートアップ企業にとって、資金調達の選択肢は多い方が良いと思いますので、幅広く情報収集することをお勧めいたします。

ベンチャーデットを利用するタイミング

ベンチャーデットでの資金調達のタイミングとして、主に2つのシチュエーションが考えられます。

一つ目のシチュエーションは、エクイティファイナンスと同時期、または直後のタイミングです。
ベンチャーデットを提供する金融機関の判断材料の大きな一つとして、どのベンチャーキャピタルや投資家が支援をしているか、という点が挙げられます。
エクイティファイナンスを実施したことはつまり、そのタイミングで投資家から評価を受けている、ということになり、金融機関にとってはポジティブな判断材料になり得るでしょう。
このため、エクイティファイナンスと同時期、または直後はベンチャーデットによる資金調達の適切なタイミングの一つと言えます。

二つ目は、計画しているエクイティファイナンス活動を始める前のタイミングです。エクイティファイナンスは投資家との交渉ごとであり、決定権は投資家が持っているため、予定よりも長引くことが想定されます。計画よりも遅れてしまった場合、手元資金が薄くなってきてしまうため、スタートアップ企業側の交渉力が低下してしまいます。そのためスタートアップ企業は、エクイティファイナンス活動前にベンチャーデット等によって資金を確保し、エクイティファイナンス活動に備えることが推奨されます。

一方で、ベンチャーデットの貸し手である銀行は、エクイティファイナンスの蓋然性を中心に評価して融資可否を判断する必要があるため、スタートアップ企業の評価ノウハウが乏しい銀行にとっては難易度が高いタイミングと言えます。

「Flex Capital」は独自のノウハウからスタートアップ企業のエクイティファイナンスの蓋然性を評価し、支援実績を積み重ねてきています。一つ目のタイミングのみならず、二つ目のタイミングでも、スピーディーにベンチャーデットのご提案が可能です。

ベンチャーデットが国内で普及してきた背景

国内でベンチャーデットが普及してきた背景には様々な事象が重なっておりますが、主に以下の3つの事象が挙げられます。

エクイティファイナンス市場の課題

2022年を節目として、米国のIT株の価値が大幅に減少し、この影響は日本の上場IT企業にも及びました。これにより、IPOを目指す企業はより低い株価で市場に進出せざるを得なくなり、以前に比べて低い評価額での資金調達を強いられる状況に直面しています。スタートアップ企業は成長を継続するための資金が必要であり、従来の銀行融資や政府支援では新しいビジネスモデルに適応しづらいため、デット・ファイナンス、特にベンチャーデットの需要が高まっています。

政策による後押し

日本政府は、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、「スタートアップ育成5か年計画」を策定するなど、スタートアップ企業への支援を強化しています。国内のメガバンクを含む金融機関も、政府が国をあげてスタートアップ企業を支援するという政策に後押しされ、ベンチャーデットが普及してきていると考えられます。

M&A市場の活性化

国内スタートアップのM&Aが増加していることも、ベンチャーデット普及の一因です。M&Aの活性化は、スタートアップ企業のExit戦略に多様性をもたらし、金融機関がスタートアップへの融資を検討しやすくなっています。Exitの選択肢が広がることで、スタートアップ企業は成長戦略を多角的に展開できるようになり、金融機関はベンチャーデットを通じてこれらの企業を支援する機会を見出してきています。

これらの要因が相まって、ベンチャーデットが国内で普及してきていると考えられます。

ベンチャーデットのメリット

ベンチャーデットのメリットは以下の3点挙げられます。

  1. 株式の希薄化を回避できる
  2. ダウンラウンドを回避できる
  3. スピーディーな資金調達が可能

株式の希薄化を回避できる

エクイティファイナンスは、新株発行など株主資本(エクイティ)の増加をもたらす資金調達のため、既存株主の持ち株比率の低下を引き起こします。対照的に、ベンチャーデットでも新株予約権の付かない融資の場合は、希薄化を回避することができます。新株予約権付き融資の場合でもエクイティファイナンスと比べて株式の希薄化を抑えて資金調達することができるため、経営陣は既存株主の持ち株比率を維持しつつ、必要な資金を確保できる点はベンチャーデットのメリットと言えます。

ダウンラウンドを回避できる

ダウンラウンドは、前回の資金調達時に比べて低い株式価値での資金調達を意味し、既存株主の損失に直結します。ベンチャーデットは、事業の成長をサポートできる資金の調達をしつつも株式の希薄化を最小限に抑えることができるため、ダウンラウンドを回避するための効果的な手段となり得ます。

さらに、ベンチャーデットは次回のエクイティファイナンスが行われるまでの間、つなぎ資金としても利用することが可能です。これにより、企業は適切なタイミングやより有利な条件で次のエクイティファイナンスを準備し、実施することができます。ベンチャーデットによって比較的短期間で資金を調達し、事業拡大にアクセルを踏み続けられるため、ダウンラウンドのリスクをさらに低減することが可能です。

スピーディーな資金調達が可能

エクイティファイナンスのプロセスは、投資家へのプレゼンテーション、デューデリジェンス、契約交渉などに時間を要し、資金調達までに数ヶ月を要する可能性があります。一方で、ベンチャーデットは返済期限が設けられていること、融資の性質上、返済優先度もエクイティより高いこと等の理由から、エクイティファイナンスよりも審査期間が短期間になるケースが多く、より機動的な資金調達ができる点もメリットです。

私たちの「Flex Capital」は審査申込から2週間以内に結果を回答しておりますので、多くのベンチャーデットよりもスピーディーな点も特徴です。

ベンチャーデットのデメリット

ベンチャーデットのデメリットは主に以下の4点が挙げられます。

  1. 新株予約権による株式の希薄化
  2. 返済義務がある
  3. 金利が高い
  4. コベナンツ条項を設定される可能性がある

新株予約権による株式の希薄化

ベンチャーデットの中には、新株予約権の付与を条件とするものが存在します。この新株予約権が行使されると、株式の希薄化が生じ、既存株主の持ち分比率が減少します。特に、新株予約権付きの場合、資金調達の際に株式の希薄化を抑えたい企業にとっては考慮すべきポイントとなるでしょう。

返済義務がある

ベンチャーデットは借入金に当たるため、返済義務を伴います。返済方法は借入する企業の信用力によって毎月返済する場合もありますし、返済期日に一括で返済する場合もあります。

多くのスタートアップ企業は事業収益を生んでいないことを考えると、返済義務があり、返済期日が決まっていることは大きなプレッシャーになるでしょう。毎月返済する必要がある場合は、キャッシュフローに影響を及ぼすことになる点もデメリットの一つとなります。

金利が高い

一般的な銀行融資と比べ、ベンチャーデットの金利は高く設定される傾向があります。スタートアップ企業への融資が高リスクであることが要因ではありますが、金利の負担が大きくなることは資金繰りへの影響が少なくないことを予め認識しておく必要があります。

またベンチャーデットの中でも、新株予約権の付与の必要有無によって支払金利に差が出てきます。新株予約権付き融資の場合は、金融機関の得られる可能性があるリターンが金利に加えて新株予約権の行使によるリターンも期待されることから、設定される金利は新株予約権無しの融資に比べて低く設定されるケースが多いでしょう。

新株予約権の付与の有無を決める場合は、目先の資金繰りを考慮するか、株式の希薄化を許容するか、総合的な判断を行う必要があります。

コベナンツ条項を設定される可能性がある

コベナンツ条項とは、融資契約の際に金融機関から企業に対して設定される債務者の義務のことです。借入する企業の信用力に応じてコベナンツ条項の内容は異なるものの、これにより経営における柔軟性が制限される可能性があり、例えば自己資本額の維持などの財務制限条項が設定されるケースがあります。
ベンチャーデットを利用するにあたって、金融機関からコベナンツ条項の設定を条件とされる場合は、事業成長への障害とならないか慎重に検討する必要があるでしょう。

ベンチャーデットによる資金調達事例

ここでは、日本におけるベンチャーデットでの資金調達事例を紹介します。

  • hokanがシリーズBラウンドとして総額約15億円の資金調達を実施
  • M&Aクラウド、採用強化のため銀行などからデットファイナンスにより12.5億円を調達

両社ともに弊社「Flex Capital」もベンチャーデットを支援しています。

hokanがシリーズBラウンドとして総額約15億円の資金調達を実施

2023年10月にプレスリリースが配信された、「適正な営業活動」と「組織の強固な監査体制」を実現するクラウド型保険代理店システム「hokan®」を提供する株式会社hokanがシリーズBラウンドとして第三者割当増資およびデットファイナンス(融資枠を含む)により総額約15億円の資金調達を実行しています。
本ケースはエクイティファイナンスと同時にベンチャーデットによる資金調達を行っていた事例の一つと言えるでしょう。

M&Aクラウド、採用強化のため銀行などからデットファイナンスにより12.5億円を調達

2024年3月にプレスリリースが配信された、買い手の顔が見えるM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」等を運営する株式会社M&Aクラウドがベンチャーデットを中心に12.5億円の資金調達を実施しています。
本ケースはベンチャーデットのみで資金調達を行った事例の一つです。

Fivot「Flex Capital」はスタートアップ企業様向けの新たなデットファイナンスを提供します

本記事では、ベンチャーデットの概要、メリット・デメリット、成功事例などについて解説してきました。
改めて以下に本記事のポイントをまとめます。

  1. ベンチャーデットは、スタートアップ企業向けの新しい資金調達手法で、銀行融資とエクイティファイナンスにあるギャップを埋める資金調達手段である。
  2. ベンチャーデットが国内で普及してきた背景に、エクイティファイナンス市場の残課題や政策の後押し、M&A市場の活性化などが挙げられる
  3. 株式の希薄化やダウンラウンドを避けられるメリットがあり、スピーディーな資金調達が可能。
  4. 新株予約権による希薄化の可能性、高金利や返済義務がデメリットとして挙げられる。
  5. 日本国内でも実際の資金調達事例がある。

株式会社Fivotでは、スタートアップ企業のためにデットファイナンスである「Flex Capital」を提供しています。審査は最大2週間で最大3億円の融資が可能です。

本ページで紹介したベンチャーデットに加えて、RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)も提供しています。
RBFについては、関連記事「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは|新しい資金調達方法を分かりやすく解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

詳しい情報は以下からご覧ください。

Grow With Us

30分の無料相談

その他のお問い合わせもこちらからお願いします