RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは|新しい資金調達方法を分かりやすく解説
目次
はじめに
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは、新たに注目されている資金調達の方法です。
RBFでは、将来の売上高を予測し、予測された売上高を先んじて現金化します。エクイティファイナンスと異なり、株式を希薄化させないファイナンス手法であり、将来の売上高が予測しやすいSaaS企業やEC企業などに適している調達手法です。
特に、銀行融資がなかなか受けづらいシード・アーリー期のスタートアップ企業にとって相性の良い資金調達手段と考えられています。
この記事では、RBFについて詳しく解説し、他の資金調達との違いを比較していきます。資金調達を検討する企業の方はぜひ最後まで読んでみてください。
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは資金調達の手段の一つ
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)は将来の売上高を予測し、予測された将来の売上高を現時点で現金化し、資金を調達する手段の一つです。
継続的に発生する売上の見込みがある企業が利用しやすい資金調達方法と言えます。
RBFは通常のデットファイナンスである銀行融資やエクイティファイナンスとは特徴が全く異なるため、新しい資金調達の手段としても注目されています。
また、RBFは伝統的なデットファイナンス手法を利用しづらいスタートアップ企業で活用が広がっており、新たな成長企業を支える資金調達手段として拡大しています。
RBFについて
RBFは日本だけでなく海外でも新たな資金調達法として注目され、今後規模が拡大すると予想されています。
欧米では、さまざまな類型のRBFを提供する企業が出現しており、有名な企業ではPipeやCapcase、Clearcoといった企業がこれまでに数千億円規模の資金を提供してきました。
日本においてもRBFを提供するFinTech企業が出現しはじめており、株式会社Fivotが運営するFlex CapitalもRBFによる支援を行っています。
スタートアップで活用されるRBF
RBFはスタートアップ企業での活用が拡大しています。継続的な売上、いわゆるリカーリングレベニューが期待できるSaaS企業やEC/D2C企業などが適合性が高く、銀行融資がまだ活用しづらいシード・アーリーステージの段階で活用される事例が多くみられます。
スタートアップではこれまで、特にシード・アーリー期においては、資金調達手段はエクイティファイナンスに事実上限定されている状態でした。事業や顧客基盤がまだ確立しきっておらず、事業としての変動性が高いシード・アーリー期のスタートアップは、銀行融資で満足のいく資金を調達することが難しいためです。
RBFは、一般的な銀行融資と違い、将来発生するであろう売上高に着目をすることで、規模が比較的小さく変動の激しいスタートアップであっても、資金提供の拠り所を見つけられることが、これまでの資金調達手段と相違しています。
また、RBFはエクイティファイナンスと異なり、株式の希薄化を伴わないため、経営の自由度を損なわずに資金調達が可能です。そのため、まだ株式価値が充分に高まっておらず、エクイティファイナンスによる希薄化の影響が大きいシード・アーリー期のスタートアップにとってより適している資金調達の方法と言えるでしょう。
RBFの種類
RBFには、固定型と変動型の2種類があります。
主な違いは、毎月支払う金額が売上に連動しているかどうかです。
RBFの種類 | 特徴 |
固定型 |
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変動型 |
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固定型は、毎月一定の金額の将来の売上を現時点で現金化する方法です。支払いについても、毎月固定額をお支払いいただくことになりますので、キャッシュフローが読みやすく、計画を立てやすい側面があります。
一方で、変動型では月々の支払額が売上に連動するため、売上が増加すれば当該月の支払額が増加し、支払期間は短くなります。逆に、売上が減少すれば当該月の支払額も減少するため、支払期間は長くなります。
最終的に支払う必要のある金額の総額は、固定型・変動型のどちらでも変わりはないため、自らの事業の特性や事業計画に即して選択をすることが良いでしょう。
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)のメリット
RBFには大きく以下4つのメリットがあります。
- 経営者保証や担保が不要
- スピーディーに資金調達ができる
- 資金使途が限定されない
- 株式が希薄化しない
以下に、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
経営者保証や担保が不要
一般的に、業歴の浅い新興企業や赤字企業では、融資を受ける際には経営者保証を行ったり、保有する資産を担保に供することを求められることがあります。特に、シード・アーリー期のスタートアップでは、担保となる資産をもたないため、経営者保証を行うなどして、経営者が金銭的・心理的負担を抱えることが多々あります。
しかし、RBFは将来発生するであろう将来の売上高を現時点で現金化するというスキームであるため、経営者による保証や担保を求めないことが通常です。逆に、RBFであるにもかかわらず保証や担保を求められる際には、どのようなスキームになっているのか慎重に検討することをおすすめします。
スピーディーに資金調達ができる
RBFは、申請から入金までの期間が早いのもメリットです。
一般的な融資や補助金等を利用した資金調達の場合は、提出書類が多く時間的コストがかかるほか、審査の期間も長いため入金までに時間がかかります。
RBFを提供している金融機関では、売上高の将来予測のために、さまざまなデータを活用するデータ基盤を保有していることが多くなっています。通常の銀行融資と異なり、審査資料の提出や審査はすべてオンライン化されており、手間が少なくなるよう設計されています。
また、より多くの企業に対してRBFを低コストで提供できるように、審査の効率化が進んでおり、数営業日から10営業日程度で審査が完了することが多くなっています。
そのため、RBF利用企業は、少ない手間と待機期間で資金を調達することができるため、資金調達にかかる手間と時間が削減され、より本質的に事業に集中することができます。
資金使途が限定されない
RBFでは、調達した資金の資金使途については限定されていないことが一般的です。通常の銀行融資では、資金使途が制限されていたりすることもありますが、RBFでは広告宣伝費や店舗の内装費など、幅広く事業に活用できます。
株式が希薄化しない
RBFは株式の希薄化を伴わないファイナンス手法のひとつです。
まだ事業基盤が確立しきっていないシード・アーリー期のスタートアップにとっては、エクイティファイナンスはひとつの大きな資金調達手段です。しかし、前述のとおり、シード・アーリー期のスタートアップの株式価値は充分に高まっていないことが多く、このタイミングでのエクイティファイナンスは大きな株式の希薄化を伴うこととなります。
RBFはエクイティファイナンスを代替するものではなく、補完的に利用することが望まれますが、エクイティファイナンスのタイミングを上手く調整したり、成長速度を早めて株式価値を高めたうえでエクイティファイナンスを行うなど、RBFを活用することでより戦略的に資金調達を行うことができるようになります。
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とほかの資金調達方法との違い
この章ではRBFとほかの資金調達方法との違いについて解説します。
資金調達法 | RBFとの違い |
銀行融資 |
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ファクタリング |
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エクイティファイナンス |
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補助金 |
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RBFとほかの資金調達法の違いを知ると、自身にあったものを選択しやすくなります。
さらに、RBFを利用するタイミングも把握できるため、それぞれの方法についてしっかりと把握しておきましょう。
特に、資金調達を検討するスタートアップやベンチャー企業の経営者は、比較したうえで利用してください。
銀行融資との違い
銀行から融資を受ける場合には、多くの場合にはある程度の事業実績が必要となるか、または経営者保証や担保による保全を求められることが多くなっています。
また、資料のやりとりやQ&Aを含むと、最初にコンタクトをとってから融資が実行するまではそれなりの時間と手間をかける必要があります。
RBFは前述のとおり、将来の売上高を予測し、予測された将来売上高を現時点で現金化する手法です。
経営者保証や担保は原則として不要であるほか、審査から入金までの時間は比較的短く、最短で数営業日から10営業日程度で完了します。
また、法的には、RBFは将来の売り上げを将来債権として金融機関へ売却するスキームが取られることが多く、法的にも一般的な融資とは異なります。
そのため、例えば予測されていた将来の売上高が実際には全く発生しなかった場合や、発生した売上高(売掛金)が実際には回収ができなかった場合には支払義務が発生しないなど、融資とは大きな違いがあります。
これはつまり、RBFは融資ではなく、(将来)債権の買取サービスであるということを表しています。RBFを提供する金融機関は、RBF利用企業(例えばスタートアップ)に対して融資を行なっているのではなく、そのスタートアップの先にいる取引先に対する将来の売上高を買い取っています。
この点は極めて重要な点であり、RBFを利用する際にはよく理解をしておきたい点です。
そのため、例えばRBFを利用中に、とある取引先に対して売上高を計上した(請求書を発行し、入金を待っていた)が、その取引先が倒産してしまい売掛金が回収できなかった場合などにおいては、その売上高についてはRBFを提供する金融機関に支払う必要がなくなる可能性があります(契約形態により異なります)。
RBFは融資と異なり、将来の売上を売却しているということを理解し、もしRBFを利用している期間に売上が回収できないなど特殊な事象が発生した際には、RBFを提供している金融機関に相談すると良いでしょう。
ファクタリングとの違い
ファクタリングは手元にある請求書や売掛金などの債権を第三者へ売却し、早期に現金化するサービスです。
そういった意味では、RBFとはもっとも性格が近い調達手段といえます。しかし、RBFでは将来の売上高 = 将来の債権を対象とすることに対して、通常のファクタリングでは既に発生済みの過去の請求書 = 過去の債権を対象としていることがもっとも大きな違いとなっています。
この違いにより、ファクタリングでは手持ちの売却可能な請求書や債権しか利用できないために、自由度がRBFと比べて低くなります。
また、ファクタリングでは1-2ヶ月先の入金予定である請求書等を売却し現金化することで入金を早めていますが、1-2ヶ月後にはファクタリング会社へ弁済をする必要があるため、効果が短期的に留まります。
RBFでは、最大で6-12ヶ月先の将来の債権まで対象となるために、資金の効果も同様に比較的長く継続することが特徴です。
エクイティファイナンスとの違い
エクイティファイナンスとは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、事業会社などに対して新株を発行し、株式を引き受けてもらう代わりに、資金を調達する手段です。
そのため、創業者や既存の株主が保有している株式の割合が相対的に減少し、新たな株主を迎え入れる手法となっています。
エクイティファイナンスはスタートアップ企業にとっては一般的な資金調達手法ですが、RBFやデットファイナンスと異なり、株式の希薄化が発生します。
そのため、将来的にM&AやIPOによってスタートアップ企業の株式価値が具現化する際に、創業者や既存株主が受け取れるはずであった価値が減少する可能性があります。
また、エクイティファイナンスを実施して新たな株主を迎える場合には、株主間契約という、株主との間での契約を締結することが一般的です。
株主間契約には、一定の事業活動に対して、株主の承認や報告を求める内容が入ることが一般的であり、経営の自由度は減少することとなります。
RBFは前述のとおり希薄化を伴わないファイナンス手法であるため、株式の希薄化やそれに伴う経営の自由度の減少は発生しません。
他方で、エクイティファイナンスは返済義務のない資金であるため、RBFとは違いより長期的な目線での資金活用が可能である点がメリットとなっています。
補助金との違い
補助金とは、国や地方自治体が企業や個人事業主などに資金を提供する方法です。
返済義務がなく条件を満たせば補助金を受け取れます。エクイティファイナンスと異なり株式の希薄化もありません。
補助金は非常に魅力的である一方で、注意すべき点があります。
それはほとんどの補助金が後払いである点です。一般的な補助金は、申請して実際に支出した費用を、後から補填する仕組みであるものが多く、補助金を受け取るためにはまず支出をする必要があります。また、審査通過から補助までが短いもので半年から長いものだと2年以上かかるケースもあります。そのため「この補助金がいつ入金されるのか?」を把握し、必要によっては他の資金調達手法も組み合わせることが必要になってきます。
そのため、例えば先行して発生する支出をRBFでカバーし、その後に補助金で後から補填を受ける、などRBFとの組み合わせもよく見られます。
RBFは特にシード・アーリー期のスタートアップにおすすめ
さまざまな資金調達手法とRBFを比較すると、スタートアップやベンチャー企業が利用しやすい方法であるのが分かります。
特に、まだ利益がでておらず、事業基盤を整えながら成長のための先行投資を積極行なっているフェーズである、シード・アーリー期のスタートアップにとっては、相性の良い資金調達手段です。
銀行からの融資だけでは十分な資金が調達できない場合や、まだ株式価値が高まっていない状態で大きく希薄化をしたくない企業は、新たな調達手段であるRBFを活用することを積極的に検討してください。
一方で、事業計画や資金繰りを考慮せずに無計画で資金を調達することは、どのような資金調達手段であっても避けるべきです。事業の状況やステージによって、しっかりと検討を行なった上で、最適と思われる手段を選択することが重要です。
RBFを活用すべきタイミング
RBFを活用すべきタイミング
RBFを活用すべきタイミングは、以下の3つです。
- より素早く事業を成長させたいとき
- エクイティファイナンスに向けたマイルストーンを達成するための資金が必要なとき
- 他の資金調達手段のための交渉時間を確保するとき
スタートアップ企業は常に競争にさらされています。国内のスタートアップ企業同士の競争もあれば、大手企業との競争、海外から参入してくるサービスとの競争など、厳しい環境で素早くビジネス機会を掴み取り、成長することが求められます。
そのために、スタートアップはエクイティファイナンスなどを活用し、株式を一部外部の投資家に渡しながら、通常では達成し得ない成長速度での成長を、採用や技術に対する先行投資を継続することで達成します。
スピードが重要であるスタートアップにとって、RBFは、より素早い成長を達成するために活用できる重要な資金調達手段となり得ます。
RBFは通常の銀行融資と異なり、シード・アーリー期のスタートアップに向いており、審査にかかる手間や時間も少ないため、CFOが不在のスタートアップであっても、事業に集中するリソースを損なわずに追加の先行投資を行う資金を得ることができます。
これは、競争にさらされ、常にスピード成長を求められるスタートアップにとって極めて重要です。
また、エクイティファイナンスを行い、更なる成長へ向けた軌道を描こうとする場合、ベンチャーキャピタルなどのエクイティ投資家が求めるマイルストーンを達成することが重要となります。
マイルストーンはかなり厳しい水準に設定されることも多く、容易に達成できることは稀です。そのため、マイルストーンを達成するために追加の資金が必要となるシーンが発生しますが、そういった状況で機動的に銀行融資を受けることは一般的には難しくなります。
RBFは、そう言ったシーンでも活用することができ、あと少しのマイルストーン達成を追加資金による投資によって達成し、エクイティファイナンスを成功に導く助けとなります。
加えて、銀行融資やエクイティファイナンスなどの他の調達手段は交渉や手続きに時間がかかることが多く、当初の想定通りのスケジュールで完了することも稀となっています。
なるべくスケジュールにゆとりをもち、前もって準備を進めることがもっとも重要ですが、ファイナンスにそこまでのリソースを割くことができないシード・アーリー期のスタートアップには難しいのが現実です。
そういった状況でも、RBFを活用することで、交渉時間を確保し、後ろ倒しになってしまったスケジュールの間をつなぐことができます。
おわりに
おわりに
この記事では、RBFの概要やほかの資金調達方法などの違いについて解説してきました。
RBFはシード・アーリー期のスタートアップに適した資金調達手法です。伝統的な銀行融資やエクイティファイナンスと異なる新たな手法として注目されています。
自社の事業状況や資金繰り、将来計画などを踏まえ、適切な調達手段を模索することが重要です。また、RBFはエクイティファイナンスや銀行融資を代替するものではなく、補完的に活用することで、もっとも効果が高まるということがいえます。
最後に、RBFは今後も市場規模が拡大することが見込まれますが、市場が拡大するとともに、スタートアップにとって不利となるような条件を押し付ける悪徳業者が発生することも十分にあり得ます。
RBFを活用する際には、運用企業がどのような会社か、どういったライセンスや登録を得た上で事業を行なっているかを、しっかりと見極めることも重要です。
Fivot「Flex Capital」はスタートアップ企業様向けの新たなデットファイナンスを提供します
本記事では、RBFの概要、メリット、他の資金調達方法との違い、活用すべきタイミングなどについて解説してきました。
改めて以下に本記事のポイントをまとめます。
- RBFは、銀行融資がなかなか受けづらいシード・アーリー期のスタートアップ企業にとって相性の良い新しい資金調達手段です。
- 継続的に発生する売上の見込みがある企業が利用しやすい資金調達方法です。
- 経営者の担保や保証が不要、株式の希薄化がない、スピーディーな調達が可能、自由な資金使途のメリットがあります。
- 銀行融資、ファクタリング、エクイティファイナンス、補助金などとそれぞれ違いがありうまく使い分けることが重要です。
- RBFを活用すべきタイミングを見極めて、事業成長につなげることが重要です。
株式会社Fivotでは、スタートアップ企業のためにデットファイナンスである「Flex Capital」を提供しています。Flex Capitalでは、RBFの中でも、無担保・無保証で固定型のRBFを提供しています。
本ページで紹介したRBFに加えて、ベンチャーデットも提供しています。
ベンチャーデットについては、関連記事「ベンチャーデットとは|概要・特徴・メリット・融資との違い・資金調達事例をまとめて解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
詳しい情報は以下からご覧ください。
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