TOP マガジン 「決算前後の対応ポイントについて-後編-」CFOが語るシリーズvol.5

「決算前後の対応ポイントについて-後編-」CFOが語るシリーズvol.5

CFOが語るシリーズ、第5回目

このシリーズは、CFOのキャリアを目指される管理部・経理部人材の方や、まだCFOが不在の創業者・CEOに向けて、CFO人材の業務内容や普段考えていることに対して、理解促進を図るコラムです。

難しいスタートアップのファイナンスの問題に対して、CFO経験豊富な方に登場していただき、実際におきた問題の解決方法や、なかなか学ぶ機会の少ないファイナンスの手法などについて、記事をアップしていきます。

Vol4では、主に決算3か月前から、決算日までのスケジュールをテーマにしましたので、Vol5は決算日以降、株主総会終了までの3か月スケジュールをテーマにご説明します。

なお、財務・経理パートは特に上場準備フェーズで決算・開示書類作成等の内容が入ってくるとかなりスケジュールが変わってくるので、フェーズ毎に分けて記載します。

第5回コラム記事担当

  • Sさん
    CFO歴:本業2社10年、アドバイザー3社
    経験ステージ:シリーズA〜IPO
    経験業種:SaaS,モビリティ,教育など
    略歴:金融機関勤務の後、スタートアップに転職、複数社で約10年財務・会計、IR等中心にコーポレート領域全般をカバー、IPOも過去経験している

決算前後6か月のスケジュール概要

まずは、前回でも記載した、決算前後6ヶ月のスケジュールの概要を再掲いたします。

<決算対応のスケジュール(例)>※3月末を決算月として作成

経営企画 財務 経理 人事・組織 通常業務 上場準備
1月上旬

1月中旬

1月下旬

予算方針作成

予算協議

予算協議

着地BS予測

減資検討

着地予測PL

着地予測PL

賞与検討

組織課題整理

組織課題整理

組織検討

各種承認

取締役会

給与・月末振込

定例MTG
2月上旬

2月中旬

2月下旬

予算協議

予算まとめ

予算まとめ

株主総会招集株主総会(減資) 賞与予算検討

会計・税務

論点協議

人員計画

人員計画

人事評価準備

各種承認

  取締役会

給与・月末振込

定例MTG
3月上旬

3月中旬

3月下旬

予算事前説明

予算事前説明

予算決議

減資対応 着地予測修正

監査対応

人事評価準備

組織決定

全社集会準備

各種承認

取締役会

給与・月末振込

定例MTG
  4月上旬

  4月中旬

4月下旬

全社予算説明

 

   

減資登記

決算・予算IR

監査対応

監査対応

監査対応

全社集会開催

人事評価

人事評価

各種承認

取締役会

給与・月末振込

定例MTG
5月上旬

5月中旬

5月下旬

予実分析 決算・予算IR

決算・予算IR

消費税納税

監査対応

個別注記作成

総会議案検討

昇給決定

給与へ反映

評価FB

各種承認

取締役会

給与・月末振込

定例MTG
6月上旬

6月中旬

6月下旬

予実分析 法人税納税 招集通知準備総会招集

総会開催

各種承認

   取締役会

給与・月末振込

定例MTG

 

決算日前~新年度1か月目

経営企画部門

  • 人事部門と連携しながら期初の全社集会など対応、株主向けのIR資料から一部社内向けに内容の調整が発生するので経営メンバー間での発表内容と役割の調整。
  • 経理部門と連携図りながら、年度の着地PLまとめ作業等行う

財務・経理部門 (上場準備フェーズ(n-1)以降)

決算前 (自社用) 各銀行の残高確認状の作成・送付
 (監査法人用)各銀行の残高確認状の作成・送付
固定資産の実地棚卸
決算日に現金実査(監査法人と行うこともある)
1週目 月次決算対応
2週目 月次決算対応ならびに決算整理対応
監査対応(主に売掛金等の残高確認状の作成・送付先等の確認)
3週目 BS、PL、税務等各項目の残高確認
売掛金・敷金その他の残高確認状の送付、送付後の対応
監査対応(主に証憑類の提出や初期QA対応)
決算短信の作成
取引金融機関へ前年度末の試算表を金融機関等に提出し、前期決算の報告と今期予算説明など実施
4週目 残高確認状の差異確認、税務関係項目
監査対応(科目全般、追加QA、残高確認状差異分析)
決算短信の作成

※取締役会の運営上、半期(可能であれば年間)の取締役会のスケジュールは事前  に案内もしくは取締役会の報告事項の1つとして報告し、必要に応じて社外役員と日程調整を行いましょう。資金調達その他のイベントで臨時取締役会などが発生しそうな場合も定例取締役会の報告事項として頭出ししておくことで、スケジュールが組み立てやすくなります。

上場準備フェーズの企業の場合に決算開示の45日開示ルールに合わせて取締役会開催日を設定しますが、月決算企業の場合は、5月1−2週目がGW、6月決算企業は8月2週目がお盆に重なるため、取締役会の開催日について事前に調整が必要です。

事前調整のないまま通常月と同様の取締役会開催日(15日前後)で設定すると、GW期間中に経理メンバーが休日出勤等で対応、もしくはお盆の休暇中に社外役員に取締役会の参加をお願いすることになるので、注意が必要です。

財務・経理部門 (上場準備前)

決算前 (自社用) 各銀行の残高確認状の作成・送付
決算日に現金の残高確認
1週目~2週目 月次決算対応ならびに決算整理対応
3週目~4週目 税理士に決算の全般チェック依頼
取引金融機関へ前年度末の試算表を金融機関等に提出し、前期決算の報告と今期予算説明など実施

人事部門

  • 新年度につき新入社員・中途採用者なども多いので4月入社メンバーの受入対応
  • 経営企画等と連携した期初の全体ミーティングなどのアレンジ
  • 組織改定実施した場合には申請の承認ルート整理などもIT部門と連携
  • 人事評価関連の全社通知や社内説明対応、評価者向け勉強会の実施等

※経営陣も管掌領域の幹部社員・メンバーに対する評価面談等を行うため、管掌領域が多い役員は評価面談が相当数入ってくるため日中の作業が難しいことがあります。
特に組織の部長も兼任している場合、組織内のメンバーの面談等を自身で行うこともあるため、評価面談以外の重要テーマを取扱う時間の事前確保が必要です。

※中途入社者の中に、業績(販売成績等)に応じた賞与が出る契約をしている方がいる場合は経理と連携を図っておきましょう。会計側では個別の雇用契約条件を把握しておらず賞与が発生すると認識してないこともあり、引当金の計上ミスなどに繋がることがあります。

新事業年度2か月目

経営企画部門

新事業年度のフォーマットに合わせた取締役会その他の資料対応(昨年使用した各資料からの修正が多く発生するので事前準備が通常月より多い)

財務・経理部門

(上場準備フェーズ(n-1)以降) 

1週目 月次決算対応
決算短信作成・修正
監査対応(科目一部、決算短信全般)
2週目 月次決算対応
決算短信の修正
計算書類、事業報告の作成
3週目 計算書類、事業報告の作成
監査対応(計算書類等)
4週目 計算書類、事業報告等の修正
監査対応(計算書類等)
法人税・消費税等の納付対応
有価証券報告書作成

 (上場準備前) 

1週目 月次決算対応
2週目 月次決算対応
3週目
4週目 計算書類、事業報告の作成
法人税・消費税等の納付対応

(重要)上記と合わせて経営陣と株主総会議案など整理、株主総会の招集通知等の作成・弁護士確認

下記に議案の一例を記載しておりますが、社内の法務担当や顧問弁護士等と連携のの上、株主総会への議案の確認をお願いいたします。

<想定議案の一例>

  • 定款の変更
  • 取締役・監査役・会計参与・会計監査人の選任
  • 計算書類の承承認(会計監査報告が無限定適正意見・監査役の監査報告の内容に問題がないこと等)
  • 募集株式の発行等における募集事項の決定
  • 新株予約権の発行における募集の決定
  • 取締役・監査役・会計参与の報酬等の決定

人事部門

人事評価の回収、経営陣と昇給・昇格者の確認、通知・給与等への反映
幹部社員や管掌領域のメンバーに対する評価のフィードバック面談

新事業年度3か月目

経営企画部門

財務、法務などと連携した決算対応や株主総会周辺の対応
新事業年度における既存投資家・新規投資家へのIR活動など

財務・経理部門

 (上場準備フェーズ(n-1)以降)

1週目 月次決算対応
計算書類、事業報告の修正
有価証券報告書の作成
2週目 月次決算対応
有価証券報告書の作成
監査対応(有価証券報告書の経理の状況以降)
法務と連携し取締役会にて株主総会の招集決議、招集通知送付
3週目 有価証券報告書の作成
監査対応(有価証券報告書全般)
株主総会の招集通知に関する株主への説明対応、総会の進行・インフラ確認
4週目 有価証券報告書の修正
株主総会の開催、株主総会の終了後の臨時取締役会の開催
株主総会終了後に税理士と連携して、税務申告書の提出

 (上場準備前)

1週目 株主総会の招集通知を作成・顧問弁護士への確認依頼・修正
2週目 取締役会にて株主総会の招集決議、招集通知送付
3週目 株主総会の招集通知に関する株主への説明対応、総会の進行・インフラ確認
4週目 株主総会の開催、株主総会の終了後の臨時取締役会の開催
※株主総会・取締役会終了後の議事録作成と登記対応
※決算公告についても定款に定めた方法で速やかに対応する

※上場準備企業で有価証券報告書の作成練習を行う場合は、期中含め入力項目は随時対応しながら、経理の状況以下の財務パートなどは8月中旬・下旬~9月上旬・中旬までに資料入力、必要に応じて監査法人などにも簡便的なチェックを依頼するスケジュールになります。最終的には9月末の株主総会終了後に行う取締役会にて、作成中のドラフトが提出(進捗報告)できるよう準備していきます。
※なお、監査法人の有価証券報告書の監査報告は上場申請の直前まででません。

人事部門

1週目~2週目 株主総会後に新たに役員(取締役・監査役等)となる方の受入準備や報酬の払い方(※)を役員と確認

※6月の月末近くに株主総会の場合はほとんど論点にはならないのですが、未上場企業の場合で6月20日頃に株主総会を実施、社外取締役(監査役)等に選任される方の役員報酬について、確認が必要です。
もう少し詳細に説明すると、6月20日に役員に就任したとして、6月20日~30日分の稼働10日間に対して、役員報酬の月額の満額を支払い、翌年の20日の株主総会で退任した場合、その月も同様に満額支払うと、実質13か月分払ったことになるため注意が必要です。

  • 役員就任月・退任月の支払を日割り計算。
  • 6月分稼働は考慮せず、7月1日分から支払い。退任時は6月分満額支払う

上記のいずれかになりますが、取締役の就任等は人事部門も事務的関与に留まることも多いのでCEO/CFOの方には多く払い過ぎにならないよう注意頂きたいです。

上場準備前と上場準備フェーズ(n-1)以降の財務・経理担当の業務まとめ

ここまで、財務・経理パートは上場準備前、上場準備フェーズ(n-1)以降と分けて決算スケジュールを記載してきましたが、参考として、下記に表としてもまとめてみました。

なおn-1以降は基本的に上場会社と同様の運用が求められるため、45日の決算短信承認等、開示対応をスケジュールに組み込んでおります。n-2以前については上場準備を進める過程では、練習として開示も意識したスケジュールでの運用は求めれられますが、運用上の課題が発生した項目については、改善期間で改善を図るとして、可能な限り期日内に作成できることを目指している段階と整理しております。

実際にはコーポレート(特に財務・経理チーム)の体制によって、主幹事証券・監査法人等がどのレベルの決算スケジュール運用を準備期間中の各年度に求めてくるかは違うと思いますので、あくまで参考としてご活用いただき、実際の運用については主幹事証券・監査法人等と協議の上、進めて頂きたいと思います。

また、上場会社の場合も会社ごとに異なりますが、招集通知印刷・発送は2か月目の4週目あたりになることも多いので、上場準備フェーズよりも更にスケジュールがタイトになります。

決算スケジュール(イメージ)

上場準備前 上場準備フェーズ(n-1)以降
1ヶ月目 1週目 月次決算 月次決算
2週目 月次決算、決算整理 月次決算、決算整理
3週目 決算整理
(税理士チェック)
残高確認状対応、監査対応
短信作成
4週目 税務関係対応
(税理士チェック)
残高確認状対応、監査対応
税務関係対応、短信作成
2ヶ月目 1週目 月次決算 月次決算
決算短信監査・修正
2週目 月次決算 月次決算
決算短信承認
計算書類、事業報告作成
3週目 計算書類、事業報告作成
4週目 計算書類、事業報告作成
法人税・消費税等納付
計算書類、事業報告監査
法人税・消費税等納付
有価証券報告書作成
3ヶ月目 1週目 月次決算
計算書類、事業報告修正
月次決算
計算書類・事業報告修正
有価証券報告書作成
2週目 月次決算
招集通知発送
月次決算
招集通知発送
有価証券報告書作成・監査
3週目 株主総会準備 有価証券報告書作成・監査
株主総会準備
4週目 株主総会
税務申告提出
有価証券報告書修正
株主総会・臨時取締役会
税務申告提出

このように、決算日以降、株主総会まで財務・経理中心にコーポレート部門は全体的に業務負荷が多くなります。特に経理部門は株主総会終了後そのまま第一四半期決算に突入するので、実質決算から4ヶ月間くらいバタバタしがちになりますし、人事もCFOが管掌する場合、新事業年度の前後は特に人事関連の項目も多く発生しますので、事前の段取りや役割分担、重要なスケジュールに関する日程確保など、経営陣・チームメンバー・外部パートナーと連携しCFOに業務が集中しないような役割分担・体制を整備していただきたいです。

さいごに

決算前後の業務解説の後編をお送りしました。
今後、CFOを目指される方や、まだCFOを迎えられていない経営者の方の参考になれば幸いです。

今後もCFO経験者が語るシリーズとして、経営者・CFOにとって役立つコンテンツを提供していきます。

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