TOP マガジン <イベントレポート>デットを使いこなせ!CFOが教える資金調達のデットファイナンス活用術とは@Overlap 2025/01/29

<イベントレポート>デットを使いこなせ!CFOが教える資金調達のデットファイナンス活用術とは@Overlap 2025/01/29

目次

イベント概要

近年利用が進んでいるスタートアップ企業におけるデットファイナンスの最適な活用方法を深掘りすべく、2名のCFOを迎え、「CFOが教える資金調達のデットファイナンス活用術」と題したイベントを開催しました。実際のデットファイナンス活用事例をベースに、活用に至った理由を、事業フェーズや資金使途の観点から紐解くとともに、検討に際して直面した課題(審査・条件・時間軸など)やそれを乗り越えたターニングポイント、エクイティファイナンスとの比較等についてお話頂きました。

■ 登壇者紹介(敬称略)

オーティファイ株式会社 取締役CFO / 後藤 千春

2012年有限責任監査法人トーマツに入所、スタートアップを中心に監査、コンサル業務に携わり、複数社の日本上場支援を経験。2016年デロイトシンガポールに出向し、シンガポール、ミャンマー、カンボジア現地企業に対しての監査、税務、会社設立を中心とした支援業務に従事。その後シンガポールのVC取締役を経て、2022年3月にオーティファイ株式会社に入社。Financeの責任者として、資金調達業務全般、事業計画策定・管理、法務などを担当。公認会計士、米国公認会計士。

 

株式会社M&Aクラウド 執行役員CFO / 村上 祐也

東北大学工学部卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。2015年新卒で野村證券株式会社へ入社。インベストメント・バンキング部門にて、インダストリアルズやコンシューマー、ヘルスケア業界の企業に対するM&AやIPO等の提案やエグゼキューションに従事。 2019年1月にM&Aクラウドに入社。数億円〜十億円超の資金調達やM&Aを手がける一方で、M&Aアドバイザリー事業部の立ち上げを担当し、事業の拡大に伴い2021年2月にMACAP事業本部を設立。2023年より現職。公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。

■ ファシリテーター

株式会社Fivot CFO / 徳持雄人

早稲田大学政治経済学部卒業後、2016年SMBC日興証券入社。同社投資銀行部門の東京及びロンドンオフィスにて、資金調達や国内外のM&Aに関する提案業務、引受・助言業務に携わる。テクノロジーを活用して新たな金融サービスを提供していることに感銘を受け、2024年10月Fivotに入社。

デットファイナンスの活用事例のご紹介

徳持:
はじめに、いつ頃からデットファイナンスを検討し始めましたか。そのきっかけや背景も含めて教えてください。

村上:
当社は、2024年3月に12.5億円のデットファイナンス調達を発表しましたが、そこに至るまでに、実際には1年から1年半くらい調達活動を実施しました。この際、エクイティ調達が前回(2021年10月)から約3年間空いていることも踏まえ、エクイティ調達も検討しましたが、当時ビジネスそのものは、「当面の投資は約1年間で回収できることがみえており、その間をブリッジすることができればより成長を加速させることができる」という状況にありました。ある程度投資の効果と期間が見えている資金ニーズということで、株式が希薄化するエクイティ調達ではなく、デットファイナンスを選択しました。

徳持:
総額12.5億円という調達金額は、目標金額に対してどのような評価ですか。また、難しかったポイントなどはありますか。

村上:
ベンチャーデットが盛り上がり始めた状況でもあったので、比較的スムーズに進んだと感じており、目標としていた金額レベルには達したと思っています。
一方で、M&Aというビジネスは「ストック型ではないビジネスモデル」という難しさがあると認識していたので、しっかりと実績を数値で示して、返済の蓋然性を説明することを心がけました。

徳持:
オーティファイさんは米国本社と日本法人がありますが、調達においてはどのような棲み分けで対応しているのですか。

後藤:
基本的に米国本社はエクイティ調達、日本法人はデット調達という形で対応しています。米国でもデットファイナンスを検討したことはあるのですが、金利が10%以上となることが多く、日本と比較すると相当高くなります。また、コベナンツもとても厳しいものが設定されるケースが多いです。これらを踏まえ、日本のプレイヤーを含めて横一線で比較した結果、米国市場でのデットファイナンスは考えない方が良いという結論に至りました。

徳持:
デットファイナンスはいつ頃から検討し始めましたか。そのきっかけや背景も含めて教えてください。

後藤:
2021年10月にエクイティ調達した際は、非常にマーケットが良かったと思います。私は、その調達の後、スタートアップにおける収益性管理の重要度が高まってきたタイミングで入社し、ランウェイをしっかりと確保するというミッションの中でデット調達を検討していました。
当時は、シリーズAを終えたばかりで、ナスダック上場を目指していることもあり、Jカーブを深く掘る事業計画となっていたので、黒字化には程遠い状況でした。そのような中でデット調達を進めることはかなり大変でした。また、米国に本社があるため、日本法人としてのデット調達であっても、金融機関からすると外資系企業扱いとなり、審査書類や契約書等のやり取りに想像以上に時間を要することとなりました。そのような状況の中、Flex Capitalから当初想定していたよりも早く調達させていただいたのはとてもありがたかったです。

徳持:
(M&Aクラウドさんのケースに戻り)12.5億円のデットファイナンス調達となると複数のレンダーから調達されたかと思いますが、条件や金額はどのように調整されましたか。

村上:
検討いただける会社から順番にお話しをし、1社良い条件で提示してくれた先がありましたので、その条件をベースに他社との目線を合わせるような対応・交渉をしました。意識していたのは「どんな条件でも良いので借りたい」というスタンスではなく、「一つ条件として納得できる事例を作って次の交渉をする」という流れでリードできたことは戦略上、良かったと思います。

徳持:
Flex Capitalの審査も進めていたと思いますが、実際はいかがでしたか。

村上:
Flex Capitalはとにかくスピードが早かったです。金融機関様などと比べるとスピード感に明確な違いがありました。条件についても他のレンダーと比べても遜色ないものでした。

徳持:
2024年6月にシリーズBのタイミングでもデットファイナンスを活用されていますが、直近のベンチャーデット市場の状況をどう考えられていますか。また、Flex Capitalとその他デットファイナンスのプレイヤーの違いや、デット調達において苦労されたところなどあれば教えてください。

後藤:
シリーズB調達の際には複数の金融機関様等からお借入れをさせていただきました。その中で個人的な感覚として、スタートアップのデット調達におけるエコシステムが進化してきていると感じました。
ただ、提出を依頼される資料は少なくなく、また提出資料もメールで何度もラリーをすることが発生していました。もちろん先方も リスクを取ってご融資いただくので、十分なチェックが必要だと理解はしていますし、それ自体に不満があったわけではありません。ただそのようなベンチャー融資が難しいという前提の下でFlex Capitalの審査スピードや資料提出のプロセスは感動的に早く手間が少ないものでした。
苦労したところですと、一部、新株予約権付融資があり、その新株予約権は米国法人との契約となり、英語となるため、金融機関様に対してかなり細かく説明することが必要になります。基本的にこれらのやりとりは私一人で対応していましたので、ご融資をご検討いただく金融機関様等に大変なお手間をおかけしましたし、私自身も時間と労力の観点で大変でした。

徳持:
新株予約権付融資となるとバリュエーションの交渉も大変かと思いますが、その点いかがですか。

後藤:
シリーズBのときのようにエクイティ調達と同じタイミングであれば実施しやすいのですが、エクイティ調達から時間が経っている場合は次回ラウンドまでの事業計画、想定バリュエーションを納得してもらった上で、前回ラウンドのバリュエーションなども鑑みて、ディスカウント率を交渉しています。

徳持:
M&Aクラウドさんも苦労されたところなどあれば教えてください。

村上:
弊社は、自社サービスとしてM&Aや資金調達を支援するプラットフォームを展開しています。案件が成約されれば売上があがりますが、成約とならない場合0円となる、いわゆる成果報酬型のビジネスモデルですので、将来収益の蓋然性の説明がしづらいものとなります。従って、金融機関様側に対しては、本当に返済できるのかという点やビジネスモデルの蓋然性を示すという点は苦労したポイントです。

デットファイナンス活用のポイント

徳持:
デット調達とエクイティ調達の棲み分けやバランスについてはどう考えていますか。

村上:
投資に対して、その回収に一定の時間はかかるものの、回収の蓋然性が高いものについてはデットファイナンスを活用することが良いと思っています。一方で、エクイティ調達については、不確実性が高い分、数年後に大きなリターンが得られるかもしれない投資のようなものと相性が良いと思っています。
例えば、あるサービスが「キャッシュを生み出すものの、回収が投資をして1年くらいかかる」というものであるとすると、その期間のギャップはデットファイナンスでブリッジして対応していくのが良いと思っています。デットファイナンスは借りて返済すると、また借りることができるので、このサイクルを回せるというメリットもあります。

後藤:
村上さんの仰っていただいた通りで、ROIが見えているものやスケールできる自信があるものについては、デットファイナンスで調達したいと思っています。

徳持:
事業計画について、エクイティ調達用とデット調達用で粒度や説明上のキーポイントを分けて作成するなどはあるかと思いますが、その点はいかがですか。

後藤:
事業計画を複数作成することは、管理上大変なので本当は実施したくないですが、事業計画を見せる相手によって、アプローチは変えないといけないと思っています。VCですと成功率が低くともユニコーンに投資をしファンドリターンを確保するビジネスモデルと理解しており、高い視点、目線を裏付けるような市場の大きさやチームの強さがあるか、高い成長ポテンシャルを示さないといけないと思っています。一方、デットプレーヤーの中心である銀行などの金融機関は、より保守的であり、現実的なキャッシュフロー見通しを提示できない事業計画を出しても納得いただけないので、目線を高く上げすぎず、過去の実績から十分に説明可能な事業数値を基に話をすることを意識しています。

村上:
弊社は事業計画は複数作成しておらず、一つで対応しています。ただし相手によって話すポイントは変えています。金融機関ですと、お金を返してくれるかというところを見ていると思いますので、そのポイントを強調してお話しをするようにしています。

徳持:
エクイティ投資家 (キャピタリスト) とデットプレーヤー (銀行員等) とで、パーソナリティの違いなど感じる部分があれば教えてください。

村上:
エクイティ投資家の方は、より将来性や気概・理念などの数字以外の定性面を重視して出資先を選定していると思っています。逆に金融機関の方は、予実を合わせるというような数値面を重視してチェックされると思っています。
後藤:
付け加えると、近年ではベンチャーデットのプレイヤーの方々も、将来性を評価するというエクイティ投資家寄りの考え方を取り入れる動きもあり、ベンチャーにとって説明がしやすくなる傾向にあると思っています。

徳持:
金融機関等へのアプローチ方法について教えてください。どのようなルートでファーストコンタクトを取るのでしょうか。

後藤:
基本的には既存株主の方々のご紹介で繋いで頂いています。既存株主様のLP投資家の中に金融機関がいらっしゃるケースがあり、ご紹介いただく形が多いです。ちなみにFlex CapitalについてもVCからの紹介で接点を持ちました。
村上:
弊社は少し違っており、一つ一つ自分でドアノックして開拓していました。スタートアップのデットファイナンス市場の情報を参考にしながら、メガバンク、地方銀行を中心にアプローチしました。また、他社のCFOや経営者などにも紹介してもらうなど様々なルートを使いました。おそらく20~30行とはお話しをしました。

Fivot:
金融機関のライトパーソンにアプローチするというのは苦労するポイントかと思いますが、この点はいかがですか。
村上:
「Aルートで断られたが、Bルートからいったら話が進んだ」ということもあり、どの方を経由してどこにコンタクトをするかは重要であると思っています。諦めずにキーマンを探すということが大事です。

徳持:
最終的にどこに依頼するかの基準について。金利や条件以外でも何かあれば教えてください。

村上:
まずはやはり金額が重要です。加えて、当社の場合は期間を重要視していました。短期というよりは1年半やそれ以上という一定の期間でご融資いただけるかというところを優先的に確認していました。
後藤:
期限一括返済なのか、約定返済付きなのか、据え置きがあるのかなど、返済方法は重視していました。また、借入後に事業成長面で伴走してもらえるかについても注目していました。具体的にはエンタープライズ向けの販売を主要戦略と位置付けているので、顧客紹介等のアシストの可能性がありそうかという点です。

デットファイナンスについてのアドバイス・留意点

徳持:
最後にデットファイナンスについてのアドバイスや留意点があれば教えてください。
後藤:
予実管理をしっかりとできる体制にしておくことが重要かと思います。そもそもですが、「予算をきちんと作成しているのか」、「その数字をタイムリーに正確に集計できているか」などが大事です。また、過去の実績がどうであったか、どのようなシナリオで予算を作成しているか、というところもヒアリングされます。例えば、過度にアグレッシブな予算を策定し、未達が続いているのに、その予算を変えずに進行していると判断されると、貸す側として心配になるのは当然です。予実管理ができる体制を作り、日々それを回して、しっかりと予算に当てにいける仕組みを意識して作っておくと良いかと思います。

村上:
予実管理をしっかりやるということは大前提と思っています。その上で、例えば、非常時のエマージェンシープランやバックアッププランを示すことも大事かと思います。金融機関様は回収できるかどうかを選定のポイントとされているので、ダウンサイドになったとしても「ここの費用をカットするとキャッシュは確保できる」など、返済できるプランを示すというのは安心感を持っていただくためにも、重要かと思います。

Q&Aセッション

徳持:
ライトパーソンに当たるまでに具体的にどんなことをやりましたか?
後藤:
やはりVCさんからの紹介は結果として着金までのスピード早かったので良いと思います。
村上:
まず最初は紹介が重要かと思いますので、株主含めた関係者に繋がりがないかを確認することが先決です。特に意識していたのは、担当者とお話しできた場合、なるべく早く決裁者の方と会わせて欲しいというコミュニケーションは積極的にしていました。具体的には自社の社長などを同行させて挨拶させて欲しいという打診をしていました。

徳持:
調達後のレンダーとのコミニュケーションはどれくらいの頻度でやっていますか?
村上:
定期的にコミュニケーションしたいと申し出てくれているレンダーは四半期ごとに時間をとるようにしています。それ以外は決算が出たタイミングで実施しています。
後藤:
レンダー様によりますが、およそ四半期に1回はコミュニケーションを取るようにしています。いずれはリファイナンスという話も出てくる可能性もあるので、信頼関係を構築しておくことは重要だと思っています。

徳持:
条件交渉時に工夫した事があれば教えてください。

後藤:
相見積もりを取得して、各社の提案を比較・検討するようにはします。また過去のお断りした際の条件などを事前に提示することで、希望条件を引き出せるような工夫をしていました。

村上:
融資していただく立場であるものの、取引をリードしていくというスタンスは忘れずに、事前に希望する条件面を初回面談からお伝えするようにしていました。

 

徳持:
新株予約権なしのデット調達をするメリットはありますか?
村上:
一番は株式が希薄化しないところがメリットです。

徳持:
新株予約権付きデット調達をするメリットはありますか?

後藤:
金利が低くなるので、足元のキャッシュフローの負担を軽減できるのがメリットかと思います。

徳持:
事業内容によって合うレンダー、合わないレンダーありますか?

村上:
当社のビジネスモデル、つまりパイプラインを積み上げて、決まれば収益となる成果報酬型のものは、そもそもデット調達のハードルは高いと認識しています。その中でも金利は高めにはなりますが、ベンチャーデットのプレーヤーはリスクを取っていただけると思っています。
後藤:
ベンチャー企業との相性という観点で言うと、やはりベンチャーデットのプレーヤーになると思います。

最後に

株式会社Fivotでは、今後もスタートアップ企業の皆さまの資金調達の一助となるインサイトをご提供するイベントを開催していきます。皆さま、ぜひご注目ください!

 

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