“空間”の常識を塗り替える。SPACERが挑む都市インフラ革命と、攻めのファイナンス戦略

目次
スキマを価値に。都市インフラの再定義に挑むスタートアップSPACERの挑戦
ーーまずは、SPACERの事業について教えてください。
当社はスマートロッカーを主軸とするスタートアップで、鉄道駅を中心に展開しています。当初は、従来のコインロッカーを、スマホで予約・鍵データの授受・決済ができるスマートロッカーへと置き換える「コインロッカーのデジタル化」から事業をスタートしました。特に関西圏を中心にネットワークを構築・拡大し、全国設置台数を1,800台まで拡大しています。現在はその仕組みを応用し、商品等の受け渡し(BOPIS)サービスや、観光客の荷物をロッカーからホテルへと当日配送する「ホテル配送サービス」の展開に注力しています。ホテル配送サービスでは、観光客が駅に設置された当社のスマートロッカーに荷物を預けると、同日中にホテルへ配送されるという利便性を提供しており、利用者の手ぶら観光をサポートするだけでなく、鉄道会社さまにとってもロッカーの回転率向上というメリットをもたらしています。
- 橋爪祥太 / 株式会社SPACER
- 2015年、大和証券株式会社に入社。個人・中小企業オーナー向けの資産コンサルティング営業業務に2年間従事。その後、企業提携(現コーポレート・アドバイザリー)第三部に異動しTMT、サービス、建設等のセクターでM&Aアドバイザリー業務に4年半従事。2021年10月より、MICINの経営企画室に参画。予実管理を中心としたガバナンス体制の構築や中期経営計画策定、資金調達業務等に従事。2023年11月よりSPACERに経営管理部長として入社。2024年9月より取締役CFO就任。
一般的なコインロッカーは単なる一時的な荷物の保管に留まりますが、当社のスマートロッカーは利用者の本質的なニーズ(手ぶらでの観光や目的地への荷物の移動など)に応える機能性を備えています。この付加価値の高いサービスが、当社の安定した収益構造を支え、事業の強みとなっています。将来的には、物流の最終区間である”ラストワンマイル”や起点となる”ファーストワンマイル”といった、高いニーズがありながらまだ効率化が進んでいない配送領域への事業拡大を進めます。特に大型物流網では対応が難しい中距離までの短時間配送ニーズに対して、当社のスマートロッカーネットワークと既存の鉄道インフラを戦略的に組み合わせることで、利用者を「時間と距離の制約」から解放する物流ソリューションを提供していくという構想を描いています。
証券会社からスタートアップへ。橋爪CFOの転身と着眼点
ーー橋爪さんはどのような経緯でSPACERに参画されたのでしょうか?
新卒で大和証券に入社し、営業職としてキャリアをスタートさせました。中小企業オーナーや富裕層向けの資産運用コンサルティング業務を経験した後に、投資銀行部門へ異動。ファイナンスの現場で数年間にわたり実務経験を積みました。
やがて、「当事者として経営・事業に携わってみたい」という想いが芽生え、スタートアップの世界へ飛び込みました。最初に参画したのは、ヘルスケア領域のスタートアップである株式会社MICIN(マイシン)です。
MICINでは経営企画室の立ち上げや管理部門の整備などスタートアップの経営に関わる幅広い経験を積みました。事業とコーポレートが成長の両輪として機能するための仕組を作る難しさと重要性を学ぶことが出来たと思います。
そんな折、SPACERのビジネスモデルに出会い、古くからコインロッカーが担ってきた荷物預かりサービスという明確な収益基盤を持ちながら、そこから物流など新たな事業領域へ展開していく戦略に強く惹かれました。単なる「荷物を預ける」という機能から、「都市空間における移動体験の再設計」へと価値を拡張していくアプローチに大きな可能性を感じ、2023年に参画を決意しました。
資金調達の背景。「まさに“耐え時”を乗り越えるために」
ーー2024年11月にFlex Capitalよりベンチャーデット調達をしています。この、資金調達を検討された背景を教えてください。
2024年1月にシリーズBラウンドを完了し、手荷物を宿泊先のホテルに当日発送できる新サービス「ホテル配送サービス」の開発・オペレーション構築に注力しました。
資金計画を詳細に見直す中で、もう少し資金が必要だという判断になり、追加調達の検討を始めることになりました。エクイティでの調達も複数の投資家と協議を進めていましたが、投資実行までのプロセスには一定の時間を要することが見込まれました。一方で、目の前には絶好の事業機会があり、「このタイミングを逃さずに成長投資を実行すること」が重要な経営判断となりました。
当時、急成長期特有の先行投資フェーズにあった当社にとって、従来型の銀行融資は選択肢として限定的でした。そこで注目したのが、Flex Capitalのベンチャーデットです。スタートアップの成長ステージを理解し、将来性を評価してくれる柔軟な資金調達手段として、まさに当社のニーズに合致していました。エクイティ調達との並行活用により、機動的な成長戦略を実現できる最適な選択肢だと判断しました。
Flex Capitalのベンチャーデットとの出会いと驚きの審査プロセス
ーーFlex Capitalを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
最も印象的だったのは、審査結果のスピードです。成長機会を逃さないためにスピーディーな資金調達が求められる中、Flex Capitalは初回面談から実行まで驚くほど短期間で対応してくださいました。スタートアップは積極的な事業成長を求められる一方で、健全な資金繰りの維持との間の難しいバランスを常に意識する必要があります。融資に至るまでの一連の迅速な対応により、成長投資のタイミングを逃すことなく、かつ資金面での不安を解消できたことは、経営にとって大きな安心材料となりました。
さらに、Flex Capitalはfreee会計と簡単にAPI連携できるUI/UXが構築されていることから、煩雑な資料作成や個別の説明にかかる工数を大幅に削減できたことも非常に助かりました。
全体を通じて、「審査」というよりも「事業への深い理解を前提とした、迅速かつ的確な意思決定」が行われたという印象を持っています。事業モデルやKPI設計、キャッシュフローの構造に対しても的確に理解を示してくださり、資金調達が単なる資金確保にとどまらず、事業の推進に直結する感覚を得られました。
CFO視点で見るベンチャーデットの資本効率と選択理由
ーーベンチャーデットという選択肢をどう評価していますか?
エクイティファイナンスは企業価値の大幅な向上を目指す重要な資金調達手段ですが、当社のようなインフラ型ビジネスには、デットファイナンスとの組み合わせが効果的だと考えています。
SPACERは、スマートロッカーというハードウェアと、それを制御するソフトウェア、そして物流プラットフォームを統合的に展開しています。このビジネスモデルの特徴は、初期投資後に安定的なキャッシュフローを生み出し、着実に事業を拡大できる点にあります。鉄道会社との強固なパートナーシップや、一度設置したロッカーが継続的に収益を生む構造は、まさに当社の強みです。
こうしたビジネスモデルを有する当社において、デットファイナンスは相性の良い資金調達手段ですが、中でもベンチャーデットは当社にとって理想的な選択肢でした。従来型の銀行融資では、現在の財務状況よりも過去の実績が重視される傾向があり、急成長期のスタートアップにとってはハードルが高いのが実情です。
一方、Flex Capitalのベンチャーデットは、現在の財務指標だけでなく、事業の将来性や成長ポテンシャルを総合的に評価してくれます。スマートロッカーネットワークの拡大可能性、ホテル配送サービスの成長トレンド、そして将来的な物流プラットフォームとしての展開など、当社の事業価値を深く理解した上で資金提供を決定していただけました。
安定的な収益基盤を活かしながら、株式の希薄化を抑えつつ成長投資を実行できる。そして何より、スタートアップの成長ステージを理解したパートナーからの資金調達である。エクイティとベンチャーデットを戦略的に使い分けることで、持続的かつ効率的な成長を実現できると考えています。
経営陣・株主との調整と資本政策上の使い分け
ーーFlex Capitalの調達について、社内外での反応はいかがでしたか?
社内での意思決定は非常にスムーズでした。経営陣全員が、現在の成長フェーズにおける最適な資金調達手段として高く評価し、迅速に実行の判断に至りました。特に、株式の希薄化を避けながら必要な成長資金を確保できる点、そして何より事業機会を逃さないスピード感が、経営戦略上極めて重要だと判断されました。
既存株主の皆さまからも前向きな評価をいただきました。多くの投資家の方々が、ベンチャーデットという選択肢の戦略的価値を認識してくださり、実際、複数のVCの方から「Flex Capitalを投資先企業に紹介したい」といったお問い合わせをいただきました。スタートアップの成長ステージを深く理解し、迅速かつ柔軟に対応してくれるFlex Capitalのサービスは、多くのスタートアップにとって価値ある選択肢になると感じています。
今回の資金調達を通じて、資金調達は単なる資金確保ではなく、事業戦略と密接に連動した経営判断であることを改めて認識しました。今後も事業フェーズや投資目的に応じて、エクイティとデットを戦略的に使い分け、持続的な成長を実現する最適な資本構成を追求していきたいと考えています。
今後の展望と事業会社・CVCへの協業メッセージ
ーー今後の事業展開の方向性を教えてください。
2025年の大きなトピックは、大阪万博における当社スマートロッカーの設置です。国際的なイベントでの大規模導入は、当社の技術力とサービス品質の証明となるだけでなく、グローバルな認知拡大の絶好の機会となります。この実績を起点に、全国主要都市への展開を加速させていく計画です。
現在好調な「ホテル配送サービス」の次なるステージとして、私たちは「都市圏30km圏内の即日配送プラットフォーム」の構築を目指しています。鉄道インフラとスマートロッカーネットワークを融合させることで、従来の物流では対応困難だった小規模・多頻度の配送ニーズに応える、全く新しい都市型物流ソリューションを実現します。
このビジョンの実現には、様々なステークホルダーとの協業が不可欠です。鉄道会社さまとの連携をさらに深化させながら、商業施設、ホテルチェーン、オフィスビル、さらにはCVCや事業会社の皆さまと、新たな価値創造に向けた戦略的パートナーシップを構築したいと考えています。
様々なソリューションをご提案可能ですので、ロッカーを設置できるスペースをお持ちの方とはぜひ一度お話しさせていただきたいと思っています。少しでもご関心のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
ーー 本日はありがとうございました!SPACERの更なる成長を応援しています!
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