Visaプリペイドカードを活用した福利厚生プラットフォームで新しい価値を創出——miiveがベンチャーデットを選んだ理由
目次
事業概要とサービス内容
福利厚生の新しい形を提供
ーーまず、miiveの事業内容についてご説明いただけますか。
miiveは、Visaネットワークを活用した福利厚生カードを提供しています。 企業が導入したい福利厚生を「ポイント」を使って自由に設計し、従業員はカードを使い、手軽に会社の制度を利用できます。
例えば、「オフィス周辺の飲食店限定の食事補助3,000ポイント」や、「3人以上でのランチに使えるウェルカムランチ2,000ポイント」といった具合に、目的に応じた柔軟な設定が可能です。付与されたポイントは、Visa加盟店であれば日常的に街のお店で利用できます。

従来の福利厚生は、特定の店舗やサービスでしか使えないため、「選択肢が少ない」「使いづらい」といった不満がありました。 また、企業側にとっても「福利厚生が経営や組織にとって意味のあるものになっていない」という課題があり、「従業員の使い勝手」と「会社の狙い」の両立は困難でした。
miiveは、こうした形骸化した福利厚生を「組織を動かす体験」へと変えています。
Visaカードの使いやすさと自由度で従業員の利用率を高めつつ、会社は「出社促進」や「社内交流」といった特定の行動を促すよう用途を設計できるので、 これによって、会社が意図する行動を自然な形で後押ししています。

- 栗田廉 | 株式会社miive 代表取締役CEO
- 1997年、岐阜県出身。就職活動時の「福利厚生」への違和感から、2020年に株式会社miiveを創業。人的資本経営を支える次世代の福利厚生プラットフォーム「miive(ミーブ)」を展開。2022年すごいベンチャー100、Forbes 30 Under 30 Asia 2023選出、ソフトバンクアカデミア15期生。
創業の背景と立ち上げの苦労
コロナ禍で生まれた問題意識
ーー創業の背景を教えてください。
学生時代に既存の福利厚生サービスに違和感を覚えたことがきっかけです、「これ誰が使っているのか?」と。ちょうどコロナ禍で働き方やキャリア観が大きく変わる時期でもありました。「従業員の定着」「人材確保」が重要になるなか、従来型の福利厚生は十分に機能していないと感じ、新しい福利厚生が必要だと考えました。それがmiiveの立ち上げにつながっています。
プリペイドカード事業立ち上げの壁
ーー立ち上げ期はどのような苦労がありましたか。
決済という金融領域での事業立ち上げは非常に困難でした。カード発行に関わる多様なステークホルダーとの調整や、当局のライセンス取得もすべてゼロから取り組む必要がありました。学生起業ということもあり、十分な信用力がまだない中で、事業には多額の資金が必要となる…最初の資金調達は苦労の連続でした。 それでも「必ず社会に求められるサービスになる」と信じ、突き進んできました。
プロダクトに対する確信を得た瞬間
ユーザーの高頻度利用で確信
ーープロダクトに対する確信を得た瞬間はどんな時でしたか。
振り返ると、二度あったと思います。一度目はサービス初期の頃です。まだ数十名しかユーザーはいませんでしたが、想像以上に高い頻度でmiiveをご利用いただいてました。正直、当時のプロダクトはとても使いやすいUXとはいえませんでしたが、従業員の方々が日常的に繰り返しご利用いただく姿を見て、福利厚生としての「新しい体験」を提供できていると強く感じました。

エンタープライズ企業での導入
二度目は今年の事例です。数千人規模のエンタープライズ企業に導入され、全社的にサービスが浸透し、継続的に利用されるようになったことです。大規模な組織においても価値を届けられることを確認でき、プロダクトに対する確信をさらに深めました。
ベンチャーデットを含む資金調達戦略
初期からのデット活用
ーーこれまでの資金調達戦略について教えてください。
創業初期からデットを積極的に活用してきました。エクイティによる資金調達と並行してデットを組み合わせ、ランウェイを延ばすことを常に意識してきました。単に資金を増やすだけでなく、資本効率を高め、事業の成長に必要なリソースを適切なタイミングで投入できる体制を整えることが目的です。
ーーデット調達をするきっかけについて教えてください。
シード期から株主に金融機関を紹介いただくことで、エクイティとデットを組み合わせる文化を早期に取り入れることができました。こうした株主からの助言や支援もあり、「エクイティと並行してデットを使うのは当然」という考えが根づきました。
スタートアップの資金調達では、エクイティは将来の不確実性をカバーし、デットは確度の高い事業成長や運転資金需要を支える役割を担います。当社にとって両者を戦略的に使い分けることは、単なる資金調達手段の選択にとどまらず、企業価値向上に直結する経営判断であると考えています。
資金調達の課題
急激な運転資金ニーズ
ーー資金調達面で直面した課題は何でしたか。
最大の課題は、福利厚生ポイントを一時的に立て替える必要がある点でした。社員が利用した分を一旦弊社が負担するため、利用が拡大すればするほど運転資金の需要が膨らみます。特にエンタープライズ導入が進むと利用額は一気に増加し、資金流出が発生するリスクがありました。
加えて、専任のファイナンス担当がいないこともあり、財務管理や資金繰りの精緻なモデリングが十分にできていなかったことも課題として浮き彫りになりました。成長スピードが速いスタートアップにとって、事業拡大と資金調達をいかに両立させるかが大きなテーマであると痛感しました。
Flex Capitalを選んだ理由
スピードと条件面での優位性
ーー今回、Flex Capitalのベンチャーデットを選んだ理由を教えてください。
複数のベンチャーデット提供者を比較検討した結果、最終的にFlex Capitalとメガバンクからの資金調達を選びました。Flex Capitalを選んだ決め手は、圧倒的スピード感と柔軟な条件設定です。過去を通して、スタートアップは「来月の資金繰りをどうするか」という極めて短期的な課題に直面することが多く、調達までのスピードは事業を止めないための生命線と言えます。Flex Capitalは問い合わせから契約・実行まで非常に迅速に対応いただき、我々にとって大きな安心材料となりました。
また、提示いただいた条件も、スタートアップの成長フェーズを十分に理解した内容であり、経営者目線で納得できるものでした。金利や返済スケジュールといった定量的な条件だけでなく、事業計画に応じた柔軟性を確保できる点も、他の選択肢と比べて優れていると感じました。
実際の利用体験
ーー実際の利用体験についてはいかがでしたか。
手続きは非常にシンプルで、ストレスを感じることがありませんでした。すでに準備していた情報をそのまま活用できたため、手間は最小限に抑えられました。
正直に申し上げて「非のつけどころがない」というのが率直な感想です。条件面・スピード面ともに期待以上であり、調達後も適切なサポートをいただけています。資金調達は往々にして時間と労力を奪われがちですが、Flex Capitalとの取引は、我々が本来注力すべき事業成長に集中できる環境を整えてくれたと感じています。
調達資金の使途と成長戦略
採用と広告宣伝への投資
ーー今回、シリーズBの資金調達を実現されました。調達資金はどのように活用されていますか。
今回の調達資金は、主に採用と広告宣伝に充てています。特にエンタープライズ向け営業の強化は喫緊の課題であり、営業人材の採用を最優先で進めています。大企業にサービスを導入いただく際には、単なるプロダクトセールスにとどまらず、組織全体に浸透させるためのコンサルティング的な提案力やプロジェクトマネジメント能力が求められます。そのため、経験豊富な営業人材の確保が成長のカギになると考えています。
また、プロダクトの認知度をさらに高めるために、マーケティング投資にも積極的に取り組んでいます。デジタル広告、イベント出展、コンテンツマーケティングといった多様な施策を通じて、潜在顧客への認知拡大を図っています。福利厚生市場は競合も多いため、いかに差別化要素を打ち出し、ターゲット企業に価値を訴求できるかが重要です。
現在は約20名規模の組織ですが、今後は営業・マーケティング・開発・コーポレートといった各部門で全方位採用し、体制を急速に拡大していく計画です。スタートアップにおける成長戦略として、組織と市場獲得の両輪に投資し、短期的な拡大と中長期的な基盤構築を同時に進めていくことを意識しています。
エクイティとデットの役割分担
健全なファイナンス戦略
ーーエクイティとデットの役割についてはどのように考えていますか。
miiveのビジネスは、ポイントを立て替える構造上、多額の運転資金を必要とします。このような「短期的かつ反復的な資金需要」をエクイティで賄うのは資本効率が悪く、デットで対応するのが合理的です。特に私たちの事業において、デットはキャッシュフローを安定させ、事業の継続性を担保する重要な役割を担っています。
一方で、新規事業の開発や市場拡大といった「不確実な未来への投資」こそがエクイティの役割です。リスクマネーであるエクイティは、未知の可能性に挑戦するために不可欠であり、投資家とリスクを共有しながら企業価値の最大化を目指すための資金です。
このように、資金の性質に合わせてデットとエクイティを使い分けることこそが、スタートアップにとって健全なファイナンス戦略だと考えています。用途を明確に切り分けることで、株式の希薄化を最小限に抑えつつ、成長に必要なリソースを確保できる点が最大のメリットです。
今後の展望:福利厚生からFintechへ
福利厚生市場の深耕
ーー今後の事業展望をお聞かせください。
今後3年間は、福利厚生市場に徹底的に集中します。特に大企業や中堅企業領域での導入実績を積み上げ、この分野で顧客への価値貢献を証明し、確固たるシェアを確立することを目標としています。福利厚生は企業の人事戦略の重要な一部であり、社員エンゲージメントの向上や採用競争力の強化に直結します。miiveは、単なる制度の一部ではなく、企業経営における重要な「戦略的インフラ」としての位置付けを目指しています。
Fintech領域への拡張
福利厚生領域での基盤を固めた後は、サービスをFintech領域へと拡張していきます。具体的には、団体保険や積立、給与前払い、従業員貸付といった金融サービスを「miive」アプリをハブに提供していく構想です。福利厚生を入り口に従業員と企業をつなぐ強固な基盤を築き、その上で金融サービスをシームレスに展開することで、より幅広い価値を提供できると考えています。
この構想は単なる事業多角化ではなく、企業と社員の双方にメリットをもたらす「次世代の職域プラットフォーム」への進化を意味します。その最終的なマイルストーンとして、5年後のIPOを目標に掲げています。資本市場からの信頼を得ることで、さらに大規模な成長投資を実現し、国内外での事業展開を加速させたいと考えています。
プロフェッショナル人材への呼びかけ
ーー最後に、記事をご覧の方へメッセージをお願いします。
私たちは今、新しい福利厚生の形を創り出し、それを広く世の中に届けるフェーズに入っています。福利厚生を単なる制度提供で形骸化させるのではなく、福利厚生を通じて企業文化や働き方そのものを変革していく挑戦です。
この挑戦を推進するためには、強固なコーポレート基盤と洗練されたファイナンス戦略が不可欠です。現在、特にコーポレートやファイナンス領域のプロフェッショナルを求めています。お客さまのお金を扱うFintech企業として、堅実さと成長志向の両立が重要であり、その実現に向けて共に挑む仲間を探しています。興味を持っていただいた方はぜひご連絡ください。
ーー本日はありがとうございました。

