TOP ご利用事例 MagicPodが描くAI時代のテスト自動化──Flex Capitalのベンチャーデットで広がった資本戦略の「選択肢の幅」

MagicPodが描くAI時代のテスト自動化──Flex Capitalのベンチャーデットで広がった資本戦略の「選択肢の幅」

株式会社MagicPod 様
Webやアプリなどのテストを自動化するサービスを展開する「MagicPod」は、スタートアップから大手企業まで500社以上に導入され、開発現場の生産性向上を支えています。

AIの進化によりソフトウェアテスト領域が大きな転換期を迎える中、直近でシリーズBの資金調達を完了し、本格的なグロースフェーズに進む同社。生成AIを活用した開発スピードの強化やエンジニア採用など、成長に向けた投資が求められる中、Flex Capitalのベンチャーデットをいかに活用したのか。

本記事では、MagicPod代表取締役の伊藤さんに、事業の現状、シリーズBの裏側、そしてベンチャーデット活用の実感についてお伺いしました。

目次

AIで変革するソフトウェアテスト市場

サービス概要と提供価値

ーーまず、MagicPodの事業概要について教えてください。

私たちは、Webサイトやモバイルアプリを開発したあとに必要となる「動作チェック」や「表示の確認」といったE2Eテストを自動化するサービス「MagicPod」を提供しています。

アプリやサービスを開発したあと、ボタンが正しく反応するか、表示金額が合っているかなどを一つひとつ確認する作業は、本来なら人が手作業で行わなければなりません。しかも、企業によっては毎週・毎月のように機能アップデートを行うため、テストの頻度も膨大になります。

その負担を軽減しようというのがMagicPodの使命です。AIを活用することで、自動化するテストの設定自体を簡単に作成でき、運用コストを抑えながら高い品質を維持できます。

ーーAIの活用が特徴的ですね。

はい。AIによって「テストを自動化する手順」を自動生成できる点が特長です。従来の自動化テストは、専門知識を持ったエンジニアがスクリプトを書く必要があり、属人化しやすいものでした。MagicPodではノーコードで操作できるため、テスト作成や編集のハードルが下がり、チーム全体でスピーディーに改善を回せるようになります。

  •  伊藤望 | 株式会社MagicPod 代表取締役
  • 京都大学大学院情報学研究科を修了後、株式会社ワークスアプリケーションズ入社、自動テストツール開発で社長賞を受賞するなど活躍。その後独立しTRIDENT(現・MagicPod)を設立。「日本Seleniumユーザーコミュニティ」設立、「Selenium実践入門」執筆、国際カンファレンス講演、「SeleniumConf」日本初開催など、長年テスト自動化の普及に努めてきた日本におけるテスト自動化の第一人者。

導入実績と顧客層の広がり

ーー導入企業の規模や業種について教えてください。

現在の累計導入社数は500社以上です。当初はスタートアップ企業を中心に広がりましたが、最近では内製化を進める大手企業やSIerなどにも利用が拡大しています。

頻繁にリリースを行う企業では、テストを自動化することで開発スピードを落とさずに品質を保つことができます。また、受託開発を手がける企業でも、納品時の検証プロセスを効率化できる点が評価されています。

ーー第三者検証会社でも導入があると伺いました。

そうですね。いわゆる「第三者検証会社」やテスト専門会社の中にも、MagicPodを導入してクライアント企業の検証業務に活用しているところがあります。第三者検証会社が自社の顧客向けにMagicPodを利用することで、品質とスピードの両立を実現できる。業界全体としても、テストの自動化が当たり前の基盤になりつつあると感じています。

シリーズBを経てIPOを見据える成長フェーズ

成長段階と経営課題

ーー現在はどのようなフェーズにありますか。

直近でシリーズBの資金調達を完了し、グロースフェーズに入っていると認識しています。シードやシリーズAの頃は、市場のニーズを検証し、プロダクトマーケットフィット(PMF)を確立することに注力していました。現在は、事業の方向性が定まり、売上・組織の両面での拡張を進めている段階です。社内体制も整ってきたことで、いよいよ事業をスケールさせていくフェーズに入りました。

生成AI対応と採用強化

ーー現状の経営課題はどのような点でしょうか。

最近は生成AIの技術が急速に進化しており、それに伴って「テスト自動化のあり方」自体が大きく変化しています。我々もAIを活用した新機能を次々とリリースしていますが、AI対応のスピードをさらに上げる必要があると感じています。そのために、最も重要なのはエンジニア採用の加速です。既存メンバーの生産性向上も進めていますが、開発のスピードを上げるには人員の強化が欠かせません。採用のスピードは以前より上がっているものの、まだ「もっとスピードを持って取り組みたい」と感じている部分が課題です。

資金調達におけるハードシングスと市場の変化

シリーズB調達で直面した壁

ーーシリーズBの資金調達ではどのような苦労がありましたか。

大きかったのは時間の問題ですね。特にリード投資家候補との交渉が長引き、想定よりも時間がかかりました。また、最終的な契約手続きにも3〜4ヶ月ほどかかり、全体としてかなりの期間を要した感覚があります。

当時、私は採用やマーケティング、営業なども兼務していたため、資金調達と事業運営を同時に進めるのは非常にハードでした。調達完了後は採用担当者やマーケティング担当を新たに迎え、以前と比べると事業の成長により集中できる環境が整ってきたと感じています。

市況変化と評価の難しさ

ーー市場環境の変化についてはどのような影響がありましたか。

はい。シリーズAの頃と比べると、シリーズBでは企業価値の評価水準が明らかに変わったと感じました。以前のようにPSR(Price Sales Ratio)などの指標をそのまま適用するのが難しくなっており、評価の基準となる「ベンチマークとなる上場企業」を探そうとしても、ちょうどよい例が少ないという状況もありました。こうした環境もあり、会社の価値をどう評価してもらうかという点では苦労がありました。

一方で、当社はバーンレートが高すぎず、比較的効率の良いコスト構造で運営していたため、その部分はポジティブに見てもらえたと思います。健全なコスト構造を保っていたことが、結果的にプラスに作用したと思います。

Flex Capitalを選んだ理由とその効果

選択の決め手は「柔軟性」と「スピード」

ーーFlex Capitalのベンチャーデットを利用した背景を教えてください。

もともとデットファイナンスには興味がありましたが、多くの金融機関では担保や保証が必要で、ハードルが高かったため利用を見送っていました。

そんな中でFlex Capitalからご提案をいただき、「手続きがシンプル」で「柔軟な条件が選べる」ことが魅力的だと感じました。ご提案いただいた条件が、担保や保証が不要であったことに加え、自社の資金戦略と非常にマッチしており、これであれば当社としても十分に活用できると判断しました。この条件であれば、次の資金調達を急ぐ必要がなくなり、ランウェイをしっかり延ばせる。その点が大きかったですね。

ーー実際にどのような効果がありましたか。

融資を受けたことで、ランウェイを半年以上延ばすことができました。これにより、エクイティ調達を焦らず進める余裕が生まれ、投資家との交渉も落ち着いて行えました。

スタートアップにとって「あと何ヶ月で調達しないといけない」という状況に追い込まれると、どうしても交渉の選択肢が狭くなります。強気で交渉したくても、時間がないことで妥協が生まれてしまう。その点、借入ができることで「調達を急がなくてもよい」、「最悪、調達せずに自社のキャッシュだけでしばらく頑張るという選択も取り得る」という“余白”がつくれました。

この余白があったことで、シリーズBの交渉でも過度な妥協をせずに進められたと感じています。また、調達前に何名かエンジニアを採用することもでき、事業成長のスピードを落とさずに済んだのは非常に大きな効果でした。

経済条件に対する意見も投資家の中にはありましたが、実際に追加で払う金額は数百万円程度であり、それによって得られるメリットを考えれば十分に合理的だと判断しました。「時間を買う」意味合いが強かったと思います。

資本構成における健全なデット活用

エクイティとのバランス感覚

ーーエクイティとデットのバランスはどのように考えていますか。

私の中では、「エクイティで5億円を調達したら、デットはその半分程度まで」がひとつの目安になると思っています。もちろん、多少超えても問題ない場面はあるかもしれませんが、過度にデット比率が高まると財務レバレッジが高いと判断され、銀行融資を受けづらくなったり、取引先からの与信にも影響します。

そのため、あくまで財務の健全性を維持した上でのレバレッジ活用を意識しています。資本政策上、リスクを取り過ぎない姿勢を保つことが重要だと考えています。

Flex Capitalへの評価と期待

スタートアップに寄り添う金融体験

ーーFlex Capitalとの取引を通じて感じたことを教えてください。

非常にスピーディーかつ柔軟な対応をしていただきました。スタートアップ特有の状況を理解してもらえたのは大きかったです。手続きの簡易さも印象的でした。書類の準備が最小限で済み、煩雑なやり取りが少なかった点は、事業運営と並行する中で本当に助かりました。

改善に向けた要望

ーー今後、Flex Capitalに期待することはありますか。

一つは、他の金融機関とのデータ連携です。複数の金融機関に同じ書類を何度も提出しなければならないのは非効率です。Flex Capitalの与信モデルが他の金融機関にも活用され、提出・審査がシームレスになれば、スタートアップの金融体験全体が変わると思います。

AIで広がるテスト自動化の未来とグローバル展開

AIが切り拓く新たな市場機会

ーー今後の事業展望について教えてください。

今後は、生成AIを活用して従来自動化が難しかった領域を解決していくことが大きなテーマになると考えています。

現在、自動化できているテスト工程は市場全体のほんの一部に過ぎません。国内のソフトウェアテスト市場は数兆円規模ですが、その大半はいまだ人手で行われています。

AIによって自動化がより容易になれば、これまで手動に頼っていた大規模テストマーケットに本格的にリーチできるようになります。競争はこれまで以上に増えるかもしれませんが、市場そのものが10倍や20倍といったレベルで拡大する可能性があると感じています。そのため、競合が増えても十分に成長の余地がある分野だと思っています。

グローバルでの挑戦と可能性

ーー海外展開についてはいかがでしょうか。

ソフトウェアテストという領域は、他の産業と比べて文化的な違いが大きく影響しにくい分野です。そのため、海外でも通用しやすいプロダクトだと考えています。実際に私たちもアメリカを中心に試験的な展開を始めており、英語ネイティブのメンバーを採用してグローバルマーケティングを強化しています。

特に、我々の製品は「機能の豊富さ」と「価格競争力」の両立ができている点で優位性があります。現地で正しくポジショニングできれば、海外市場でも十分に勝負できると考えています。

私たちはAIの力でテスト市場全体を拡張し、国内外のエンジニアがより創造的な開発に集中できる世界を目指していきます。少しでも興味がある方がいれば、ぜひ一度お話しできるとうれしいです。

ーー本日はありがとうございました。

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