TOP ご利用事例 動くホテルで地域と世界をつなぐーキャンピングカープラットフォームCarstayが描く成長戦略と、資金調達にFlex Capitalを選んだ理由

動くホテルで地域と世界をつなぐーキャンピングカープラットフォームCarstayが描く成長戦略と、資金調達にFlex Capitalを選んだ理由

Carstay株式会社 様
「誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界を作る」――そんな想いから生まれたCarstay株式会社。2018年の創業以来、キャンピングカーシェアや販売、製造を手がけ、場所にとらわれない「動くホテル」という新たなコンセプトの浸透を目指しています。当社が環境の変化に柔軟に対応しながら成長を続けるなか、Flex Capitalはスピーディかつ柔軟に成長資金を調達する手段としてCarstayに伴走してきました。。今回は、代表の宮下さんに、事業の変遷とFlex Capitalを活用した理由、そして今後の展望について話をお伺いしました。

目次

地域と世界を滑らかにつなぐ移動インフラを

―― Carstayを創業された背景について教えてください。

Carstayは2018年6月に創業し、現在は8期目を迎えています。創業当初は、主に訪日外国人旅行者を対象とし、キャンピングカーを活用した「車中泊ができるモビリティ型の宿泊サービス」を提供することを構想していました。イメージとしては、キャンピングカー版のAirbnbのようなモデルです。

この着想の背景には、私自身がNPO法人で訪日外国人観光客のローカルガイドをしていた経験があります。観光地を訪れる外国人が、インフラの整っていない地方での移動手段に困ったり、宿泊先を見つけづらかったりする様子を何度も見てきました。

こうした状況を踏まえ、「人が行きたい場所に自由に行けて、現地でそのまま宿泊もできる移動手段があれば、地域と世界をもっとスムーズにつなげられるのではないか」と考えました。その解決策として、移動と宿泊の機能を兼ね備えたキャンピングカーに着目したことが、事業の出発点です。

  • Carstay株式会社 代表取締役 宮下 晃樹
  • 一般社団法人シェアリングエコノミー協会 幹事。公認会計士。1992年生まれ、慶應義塾大学卒。20歳で公認会計士試験に合格。2014年にDeloitte Japanに入社し、IPO支援業務に従事。2016年に独立し、国内最大級の観光ガイド団体を立ち上げ。累計1,200名の訪日外国人を地方へ誘致する中、旅行者と地域観光の課題は、移動と滞在方法の選択肢が少ないことと確信。2018年にCarstay株式会社を起業し、キャンピングカーのカーシェアリングサービスをリリース。自動運転時代に向けて、VAN LIFE(バンライフ)の文化を広げ、自由で豊かなモビリティ社会を目指す。

https://carstay.jp/ja/

コロナ禍が追い風に。国内9割、ペットやイベント需要に対応

―― サービスリリース当初は新型コロナウイルスの影響も大きかったと思います。事業はどのように展開されていったのでしょうか。

当社のサービスは2020年4月に本格的なリリースを予定していましたが、ちょうどそのタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し、インバウンド向け(訪日外国人)をターゲットに想定していた計画は大きな見直しを迫られました。

しかしながら、外出や旅行が制限されるなかでも「三密(密閉・密集・密接)を避けながら移動・宿泊できる手段」として国内でのキャンピングカーへの関心が急速に高まり、結果的には国内在住者の旅行市場へのシフトが成長の追い風となりました。

現在、Carstayの利用者の約9割は国内在住のお客さまです。特に顕著だったのは、ペットと一緒に旅行を楽しみたいという層からの支持です。一般的な宿泊施設ではペット同伴が制限されるケースが多い一方、当社のキャンピングカーの約4割はペット同伴が可能であるため、代替手段の少ないニーズに対応できました。

また、夏祭りや花火大会、音楽フェスティバルなどのイベント開催時には、地域の宿泊施設が不足するケースが少なくありません。そうしたタイミングで「動く宿」としてのキャンピングカーの需要が高まり、イベント時の一時的な宿泊手段としても活用いただいています。

自社ガレージでキャンピングカー製造を内製化〜利用・購入・再活用が循環するビジネスモデルへ

―― 現在は自社でキャンピングカーの製造も手がけていると伺いました。

3年ほど前からは横浜市内に自社の整備ガレージを構え、キャンピングカーの製造・販売事業にも本格的に取り組んでいます。具体的には、商用バンとして流通しているトヨタの「ハイエース」などをベースに、内装をカスタマイズして車中泊仕様に仕立てる形で商品化しています。

こうした製造を始めた背景には、Carstayのカーシェアを通じてキャンピングカーに興味を持ち、「いずれは自分でも所有したい」と考える方が一定数存在していたことがあります。実際、利用者のおよそ5〜6組に1組の割合で、購入検討に至るケースが見られます。

さらに、当社で販売したキャンピングカーの多くは、オーナーさまが使用していない期間にCarstayのプラットフォームを通じて他のユーザーに提供することが可能です。これにより、「利用者としてのシェアリング利用 →利用を通じて所有欲求が高まり、購入 → オーナーとなって再びシェアリングに参加」という循環が生まれ、車両を効率的に活用できる『循環型のビジネスモデル』を形成することが可能となりました。

この循環型のビジネスモデルは、三者にとってメリットがあります。キャンピングカーオーナーは、使用していない期間にキャンピングカーを利用したい方とシェアすることで所有コストを軽減できます。Carstayは、自社で車両を持たなくても提供可能な車両数を増やすことができます。そして、利用者は、様々なタイプのキャンピングカーから選べる選択肢が広がります。このように限られた車両リソースを社会全体で効率的に活用できるエコシステムが構築できていると感じています。

移動と滞在の自由を支える、日常から災害時まで活用できる「動くホテル」構想

―― Carstayの事業領域をどのように定義されていますか。

当社では、自社のサービスを「動くホテル事業」と位置づけています。キャンピングカーが本来持つ移動機能に加え、”宿泊インフラ”としての価値をさらに発展させることで、従来のホテルや旅館とは異なる新たな宿泊体験を提供しています。単なる「車中泊」の枠を超え、場所を選ばず快適に滞在できる「動くホテル」として、お客さまのライフスタイルや状況に合わせた、自由度の高い滞在体験を提供しています。

また、当社の「動くホテル」としての価値は、日常の旅行シーンだけでなく”非常時の宿泊インフラ”としても大きく発揮されます。2024年の能登半島地震では、被災地に約40台のキャンピングカーを提供し、一時的な避難先や休憩スペースとしてご活用いただきました。このように、通常時から緊急時まであらゆる状況で社会に貢献できることも、当社のサービスの重要な側面です。

今後は、国内市場の需要をしっかりと捉えつつ、欧米を中心とした訪日旅行者からの長期レンタル需要にも対応していく予定です。「動くホテル」として、国内外問わず幅広いシーンで価値を発揮できる事業に成長させていきたいと考えています。

累計約4.8億円を調達ー不確実な環境下でも成長を止めない柔軟な資金戦略

―― これまでの資金調達における方針について教えてください。

Carstayは創業当初、エクイティ調達と銀行借入を組み合わせ、約7,000万円の初期資金で事業をスタートし、その後も事業成長に応じて複数回の資金調達を行っています。プレシリーズAラウンドまでの累計で約4.8億円調達しており、現在は黒字化を見据えたフェーズに移行しています。

当社が手がける宿泊事業は、天候や季節要因、さらにパンデミックや経済情勢など、外部環境の影響を受けやすいという特徴があります。こうした不確実性に備えるため、3年前からキャンピングカーの製造・販売というキャンピングカーシェアリングとは異なる新しい事業も立ち上げました。これにより、外的要因に左右されにくい収益源を確保し、企業としてのレジリエンス(= 変化への強さ)を高めることができた、と自負しています。

また、資金調達についても「次のラウンドが想定どおりに進まない」場合を常に想定し、複数のシナリオ――プランB、プランCをあらかじめ準備しています。調達の成功ありきで経営を進めるのではなく、仮に資金調達が難航しても事業成長を止めない体制を構築することが、経営判断における重要な前提としています。

エクイティでも銀行借入でもないー“第三の資金調達手段”として出会ったFlex Capital

―― Flex Capitalを認識したきっかけと、そのときの印象について教えてください。

従来の資金調達手段には、明確な課題がありました。エクイティ調達は、調達にかかる期間が長く、半年から1年に及ぶことも珍しくありません。しかもその間、経営者は本来の事業運営と並行して投資家対応や資料作成、交渉などに多くのリソースを割く必要があり、経営の集中力が分散してしまうリスクがあります。

一方で、銀行融資は、自己資本比率やキャッシュフローの状況、担保提供の可否など、返済能力の観点から一定の財務的要件が求められます。特に創業間もないスタートアップや成長投資を優先して一時的に財務指標が悪化している企業にとっては、こうした従来型の融資審査をクリアすることが難しい現実があります。

Flex Capitalを知ったのは、当社を支援していただいている方からのご紹介がきっかけでした。スタートアップ関係者が集まるイベント「IVS(Infinity Ventures Summit)」で初めて直接お話する機会を得たのですが、サービス内容を伺って正直に驚きました。「こんな調達手段があったのか」と、まさに目から鱗が落ちたような感覚でした。

決め手は「スピード」と「手軽さ」、機会損失を防ぎ、攻めの投資を実現

―― Flex Capitalを選んだ理由を改めて教えてください。

Flex Capitalを選んだ最大の理由は、資金調達プロセスのスピード感と、手続きの簡便さにあります。特に、テクノロジーをフルに活用した審査方法は他にはない新しい仕組みだと感じました。具体的には、会計データや銀行口座データなどのシステム連携により、当社の財務状況をリアルタイムに共有できる仕組みが整っており、従来の金融機関の融資審査と比べて圧倒的にスピーディかつ効率的でした。

このスピード感が特に効果を発揮したのは、当社が新規事業を立ち上げる重要な局面でした。事業拡大に必要な即戦力エンジニアの採用と、製造設備への投資や人件費の前払いといった初期コストが重複し、従来の資金調達では対応が難しい「時間との勝負」に追い込まれる。

そんな状況にあっても、Flex Capitalがあったことで、この難局を乗り切り、絶妙なタイミングで必要資金を確保することできました。結果として、優秀な人材の採用機会を逃すことなく、事業立ち上げ計画も予定通りに進めることができたのです。資金調達の機動力がビジネス判断の実行スピードを高め、まさに経営における「攻めの姿勢」を可能にしてくれました。スピードが競争力の源泉であるスタートアップにとって、この価値は計り知れません。

次の調達ステップを後押しする“資金調達の潤滑油”としての役割

―― Flex Capitalを利用した後の資金活用や、資本政策上の影響について教えてください。

Flex Capitalからの資金調達後、当社では株式投資型クラウドファンディング(Equity Crowdfunding。以下、ECF)を実施しました。ECFとは、一般の個人投資家に向けて自社株式発行による増資を少額から募集できる比較的新しい資金調達手法で、資金確保だけでなく、サービスのファンや応援者を増やす効果もあります。

Flex Capitalでスピーディに資金を確保できたからこそ、じっくり時間をかけて準備が必要なECFに取り組む余裕が生まれました。さらに、ECF実施と並行して進めていた事業会社からのエクイティ調達も成功し、結果的に複数の資金調達手段を適切なタイミングで実行することができました。
振り返ってみると、Flex Capitalは単なる「資金調達手段」というより、当社の成長フェーズに合わせた「次の調達ステップへの橋渡し」という重要な役割を担ってくれました。まさに「資金調達全体の潤滑油」として、私たちの資金調達の選択肢と自由度を大きく広げてくれたと実感しています。

ファイナンスは「同じ船に乗る仲間集め」会計士出身の視点から見た資金調達の本質

―― 会計士としてのバックグラウンドを踏まえ、経営者になった今、ファイナンスに対する考え方にどのような変化がありましたか。

会計士としてスタートアップの資金繰りを「見る側」から、今は経営者として資金を「扱う側」に変わったわけですが、その違いは想像以上に大きいと実感しています。

資金調達には当然ながら責任が伴い、調達する側(企業)と支援する側(投資家・金融機関など)の間には、情報や知識における“非対称性”がどうしても存在します。そのため、最低限の財務やファイナンスに関する知識を身につけておくことは、経営者として不可欠だと感じています。

ただし、すべてを一人で抱える必要はありません。分からないことや判断に迷うことがあれば、信頼できる株主や投資家、外部の専門家に相談することが重要です。実際、当社でも多くの場面で、支援者の知見に助けられてきました。

私自身が考えるファイナンスとは、「資金を集める行為」ではなく、「同じ船に乗ってくれる仲間を集める行為」だと思っています。その意識を持つことで、資金調達という行為が単なる資本確保ではなく、事業の未来を共有するパートナーとの対話になる。そう捉えることで、より良い経営判断ができ、事業も着実に前に進めると確信しています。

―― 最後に今後の展望について教えてください。

今後は、「動くホテル」というコンセプトを軸に、より広い領域へ提供価値を拡張していきたいと考えています。単にキャンピングカーを使った移動や滞在の提供にとどまらず、それを通じて地域の観光資源を活性化させたり、防災・災害対応といった公共的な用途にも貢献していくことが目標です。

また、将来的には国内需要を押さえたうえで、インバウンド需要への対応も強化していきたいと考えています。特に、欧米からの訪日客には、自由度の高い旅のスタイルとして、移動と宿泊が一体となったキャンピングカーの魅力が伝わりやすいと感じています。海外にはバンライフという文化が根づいている国も多いため、日本独自の魅力を組み合わせたサービスとして提供できる可能性は大きいでしょう。

そのためにも、キャンピングカーの利便性や快適性をさらに高めたり、車両を資産として活用する新たな金融モデルを整えたりするなど、事業の進化に向けてやるべきことは多いと感じています。
Carstayとしては今後も、「地域と都市」「国内と世界」をシームレスにつなぐ存在であり続けたいと思っています。その中で「動くホテル」という新しいスタイルが、より多くの人の選択肢になっていけば嬉しいですね。

―― 本日はありがとうございました!

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